鬼に金棒、シェフラーにナイスパット ゴルファー世界一が1年ぶり優勝
◇米国男子◇アーノルド・パーマー招待 最終日(10日)◇ベイヒルクラブ&ロッジ(フロリダ州)◇7466yd(パー72)
特別な地位を築いている選手は大変だ。ほかの選手に勝るものが多いからこそ、その位置にいるが、劣った箇所がわずかでも見えようものなら、徹底的に一点を突っ込まれる。世界ランク1位のスコッティ・シェフラーにとっては、パッティングこそがその“弱点”と見られていた。
あらゆるショットのスタッツが上位の中、スコアに対するグリーン上でのプレー貢献度の指標「ストローク・ゲインド・パッティング(SGP)」は昨季162位(-0.301)、今季も前週まで144位(-0.407)と落ち込んでいた。ロリー・マキロイ(北アイルランド)は数週前、シェフラーについて「彼のショット技術は今、正直言ってほかの選手と全く違うレベルにある。パットが入りだしたらどうなるか…」と言及。ピン型パターからマレット型のパターにスイッチすることを推奨してもいた。
必ずしもその提案を受け入れたわけではないが、シェフラーは今週、マレットタイプのテーラーメイド スパイダー ツアーXを実戦投入した。効果はてきめん。4日間を通じてSGPは全体5位の「+4.347」、平均パット「1.58」は堂々の1位。首位タイから出た最終日は開始1番で3.5mを沈めたのをきっかけに6バーディを奪った。平均スコアが「73.2」だった日に「66」をマークする異次元のプレーを見せた。
通算15アンダーで、故アーノルド・パーマーのホスト大会では2年ぶりの優勝。7回目のPGAツアータイトルを手にしたのは昨年の「ザ・プレーヤーズ選手権」以来、約1年ぶりだった。2位との差5ストロークは2012年のタイガー・ウッズと並び大会最多。世界ランキング同様、フェデックスカップポイントレースでも1位に君臨する。
「テレビの前の人からすれば、ゴルフはとても簡単だと思われるだろう。でも実際にここで、PGAツアーで競うのは、本当に難しいこと」と苦労を重ねて勝ったことに胸を張った。取り組んできたパッティングの試行錯誤も「試合を通じてどう機能するかを考えている。完璧なゴルフをしようとしたら、きっとうまくいかない。そんなことできないんだ」と地道な作業を続けてきたつもり。
次週は連覇がかかる“第5のメジャー”。「今はみんながランキングトップにいる僕のことを見上げて、引きずり降ろそうとしている。とどまるためには本当に多くの努力が求められる」。メジャーシーズンを前に王者が息を吹き返した。(フロリダ州オーランド/桂川洋一)