「自信が戻ったっす」 松山英樹の不安を上回る通算9勝目の意味
◇米国男子◇アーノルド・パーマー招待 事前情報(5日)◇ベイヒルクラブ&ロッジ(フロリダ州)◇7466yd(パー72)
春先のフロリダでは昨年、一昨年といずれも重度の首痛に苦しんだ。ことしは「アーノルド・パーマー招待」開幕2日前の段階で、腰痛に悩まされている。「先週、スイング(チェック)をしていたら痛くなって。無理をしないようにやっています」。心配が募る言葉とは裏腹に、松山英樹の表情は明るい。
3週前、ロサンゼルスでの「ジェネシス招待」で約2年ぶりに優勝した。アジア人史上単独トップのPGAツアー通算9勝目という金字塔はもとより、長引いた故障と不振を乗り越えたことを証明できたのがうれしい。「自信が戻ったっすよね。結果というのがこんなに大事なんだって。気持ちが楽になった。『まだ、全然やれる』という自信を与えてくれた」
最終日に6打差をひっくり返す快進撃が、これまでのスタイルとは違ったことも新たな発見だった。「ショットで勝った雰囲気ではなかった。周りは(後半)15番、16番のショット(いずれもピンそば1mにつけてバーディ)を見ているから、そう感じるかもしれないけれど、そうではなくて。ショットに自分が納得できなくても、上位に入れた、優勝できたことで、パッティングにも自信がついた」と勝ち方のバリエーションが増えた実感がある。
2週のオフのうちに大陸を横断し本拠地のフロリダ、今大会の会場近くの自宅に戻った。期間中の2月25日に32歳になった。再調整に取り組み、今はむしろ「ショットにはそんなに不安はない」状態に。この日の練習ラウンドは腰を気遣い、インコースのうち5ホールだけを回る省エネ調整。「あまり球を打てていないので、その分、ショートゲームの練習ができていない不安がある」とこぼしたのは、昨年よりもゲーム感覚がずっと鋭い証拠でもある。
10回目の出場となるゴルフ界の“キング”の大会。トップ10入りは2016年の6位が唯一で、昨年は初めて予選落ちを喫した。「ちょっと苦手意識が強い」のが本音だ。自宅通勤による頭のスイッチの切り替えもポイントに挙げている。「克服するのが大事だと思う。家に帰って練習するか、ここで練習するのか…。考えながら毎日を過ごしている感じです」。円熟味が年々増すようで、感じる課題はまだ山のようにある。(フロリダ州オーランド/桂川洋一)