「激動の時代の真ん中」でマキロイが年間王者に 24億円よりも大切なもの
◇米国男子プレーオフ第3戦(最終戦)◇ツアー選手権 最終日(28日)◇イーストレイクGC(ジョージア州)◇7346yd(パー70)
ロリー・マキロイ(北アイルランド)が名実ともにPGAツアーの“リーダー”としての存在価値を証明した。首位のスコッティ・シェフラーと6打差で出た最終ラウンドに「66」をマークし、大会史上最多差をひっくり返す大逆転。2007年のフェデックスカップ設立以降、タイガー・ウッズを超える史上3回目の年間王者のタイトルをつかんだ。
米国がホームのシェフラーよりも、マキロイに向けた声援のほうが多くコースに響き渡っていた。「3打差で後半を迎えられれば」という目論見よりも早く、前半7番で5mを沈めて3連続バーディで追いつきペースをその手に。14番のボギーで一歩後退しても次の15番(パー3)で9mのスライスラインを流し込むバーディでまた並んだ。
ホールを進めるたびに大きくなる「ロリー!ロリー!」のコール。16番のシェフラーのボギーでついに単独トップに立ち、通算21アンダーで逃げ切った。初日開始1番のトリプルボギー、2番のボギーを含む「263」ストロークはプレーオフ第2戦までのポイントランクによるスコアのハンディキャップを差し引いてもトップ。伝統のイーストレイクGCに新しい歴史の1ページを刻んだ。
6月の「RBCカナディアンオープン」に続き、シーズン3勝目は騒動の中でつかんだ。新リーグ「LIVゴルフシリーズ」の第4戦は次週ボストンで開催。新たな選手の移籍がうわさされている。「男子プロゴルフの世界は今、激動の時代にある。僕はそのど真ん中にいる」。33歳はコースの外では選手の代表としてPGAツアーの将来を描き、プランを具体化。相次ぐ会議や記者会見で都度、新リーグ関連の質問に正面で向き合い、考えを述べてきた。
「ここ数週間はゴルフが逃げ場だった。ロープの中なら誰にも捕まらない」と明かした。本業が疎かになる心配が募ろうとも、ツアーのために身を挺すのは「世界のエリートプロゴルフの最高の場所を守ろうとしてきた」から。「信じるものがあるならば、人は声をあげなければならない。正しいことを言っているのならば、(議論に)首を突っ込むことは幸せなこと」とオンとオフをしっかり切り替えて結果を出した。
マキロイにとって今年はPGAツアー15年目のシーズンだった。「本当にチャレンジングで、これまでとは違う一年を締めくくるのに、きょうやったことはふさわしかった」と誇らしげに言った。年間王者へのボーナス、1800万ドル(約24億7482万円)の喜びは二の次。
「お金はお金でもちろん素晴らしい。僕たちはプロゴルファーであり、ゴルフで生計を立てている。けれど、キャリアの現時点で僕は勝つことやこの道のり、感動を一緒に分かち合うことのほうがお金よりも大切だ」(ジョージア州アトランタ/桂川洋一)