2022年 ジェネシス招待

アイアンにヘッドカバーをするPGAツアー選手 アーロン・ライの信念

2022/02/22 07:45
欧州ツアーから米下部ツアーを経由してPGAツアーでプレーするアーロン・ライ

◇米国男子◇ジェネシス招待 最終日(20日)◇リビエラCC(カリフォルニア州)◇7322yd(パー71)

松山英樹ジョナサン・ベガス(ベネズエラ)と最終ラウンドを回ったアーロン・ライ(イングランド)のキャディバッグには、4本のウェッジを除くすべてのクラブにヘッドカバーがかかっていた。ウッドやパターのみならず、アイアンのヘッドも守るゴルファーはトッププロでは珍しい。

イングランド中部の都市ウルヴァーハンプトン出身のライは4歳でゴルフを始めた。父はいつも「ベストなクラブを買い与えてくれて、僕をゴルフ場のメンバーにしてくれた」というが、労働者階級の家計は必ずしも楽ではなかった。

小学生のとき、タイトリストのアイアンセットを買ってもらった。練習を終えると父は必ず、フェースの溝に入った砂をピンで掃除し、ヘッドにベビーオイルを塗って保管した。クラブを大切に扱う習慣はこの頃に芽生え、アイアンにもヘッドカバーを装着するようになった。

アーロン・ライのアイアンにはヘッドカバーが装着されている

2012年にプロ転向。欧州の下部ツアーからのたたき上げで、2020年「スコットランドオープン」でトミー・フリートウッド(イングランド)をプレーオフで破り2勝目をマークした。21年に挑戦した“入れ替え戦”を突破して、今季からPGAツアーを主戦場にしている。

最高峰のツアーに定着するような選手は、クラブもボールもウェアもメーカーから必要なだけ、いや、それ以上に提供を受けることができる。そんな世界に彼は違和感も覚える。「PGAツアーでは用具でもなんでも手に入る。でもそれは“原則”からはだいぶ離れている」

今でもアイアンにカバーをする理由。それは父の道具を大切にするという教えによるものだけではない。「自分が本来持っているもの、自分の在り方を失わないため」。境遇がどれだけ変わっても、変わりたくない自分がいる。(カリフォルニア州パシフィックパリセーズ/桂川洋一)

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