2021年 マスターズ

勝因は1Wショットの向上 松山英樹のスゴさとは/解説・宮里優作

2021/04/13 08:48
松山英樹の勝因はドライバーの精度向上(Mike Ehrmann/Getty Images)

◇メジャー第3戦◇マスターズ 最終日(11日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7475yd(パー72)

松山英樹のメジャー初制覇を伝えたTBSのテレビ中継で、最終日にゲスト解説を務めた宮里優作が後輩の快挙を祝福した。自身も2018年に「マスターズ」に出場、東北福祉大のOB、プロゴルファーの先輩として松山のオーガスタでの戦いぶりと進化を語った。

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優勝を決める前、放送席の中嶋常幸さんとはウィニングロード(グリーンからスコア提出場までの道のり)は「黙っていよう」と決めていました。でも、今となってはそんな打ち合わせも必要ありませんでした。みんな泣いて、声には出せないけれど僕もガッツポーズをしまくっていました。松山選手、本当におめでとうございます。

今年もPGAツアーの様子をずっとテレビで見ていました。松山選手はトップ10が一度もないまま「マスターズ」を迎えましたが、あらゆる面でオーガスタに照準を絞っていたように思います。直前の試合(バレロテキサスオープン)に出場したのも試合勘を保つ狙いがあったはず。新たな(目澤秀憲)コーチとのスイングのマイナーチェンジに取り組んだようです。

松山選手はかねてアイアンショットが抜群にうまく、今回は1Wショットの精度が高かったことが勝因のひとつと言えるでしょう。1Wのスイングは全体的にフラットになっていて、肩よりも低い位置にクラブを通すイメージを持っているように見えました。

フェードボールはもともと得意でしたが、ダウンスイングでクラブがインサイドから入りやすくなったことで、理想に描いていたドローボールもイメージしやすくなったようです。結果的にアイアンショットにもより良い影響を与えたように思います。普段よりもアイアンの乾いた、ソリッドな音がずっとしていました。

松山英樹(右)の快挙を祝福した宮里優作(写真は2018年全英オープン)

一時は6打あった差も3打、2打…と縮まり、最後は1打差で逃げ切り。終盤に多くの選手がバタバタするのは、超一流の選手でも勝ちたい気持ちが身体からあふれ出る「マスターズ」ならでは。とくに最終日は「攻めてきなさい」というピンポジションが多かったにもかかわらず、グリーンが硬く、ショットが着弾した後のバウンドが多くなり、下りのパットを残すケースが多かったようで、バーディチャンスが少ない展開になりました。

そこで生きたのが10回目の出場となった松山選手の経験。マスターズには“出続けること”の大切さがある。何年も何年も出て、コースの癖を知って、その上で打つ勇気が試される。痛い目に何度もあって、ミスを覚えて行く。恐怖心も抱えながら、狙い通り打てることにすごさを感じました。

2018年のマスターズをはじめ、松山選手とは欧米ツアーで一緒になった際に時間を長く共有してきました。彼の素晴らしさは目標がものすごくはっきりしていて、そこに真っすぐ向かっていること。うまくいかない時期に目標が遠ざかることがあっても、基本的にブレることがありません。多くの選手は段階を踏んだり、どうしたらいいかと寄り道をしたり、ラクな方になびいたりもするものです。けれど彼はメジャーで良いプレーを、理想のゴルフをするために時間を惜しみなく費やしてきました。

おめでとうございます、という言葉に続いて、ありがとうと伝えたい。自分が生きている間に日本人がマスターズで優勝するシーンを観られたことが幸せです。それにしても彼はこれから何回、勝つんだろう(笑)。そう思わせてくれたこともありがたく思います。こちらにとっても良い刺激になりました。もう一回、あの舞台に立ちたいと改めて思い出させてくれました。

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