2021年 マスターズ

増えたオーガスタへの苦手意識 松山英樹、新コーチと「正しい方向に」

2021/04/11 14:02
松山英樹が自己最高「65」をマークした(Mike Ehrmann/Getty Images)

◇メジャー第3戦◇マスターズ 3日目(10日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7475yd(パー72)

「マスターズ」に初めて出場したのは2011年。東北福祉大の2年生だった松山英樹はアジア勢で初のローアマチュアという快挙を遂げた。当時ラウンド中のスティーブ・ストリッカーに「ナイスプレー」と声をかけられたことを「今でも覚えている」という。

「もう一度、ここに帰ってきたい。帰って来なくちゃいけない」。あのとき感じたのと同じ思いを、松山は10年にわたって蓄積させてきた一方で、年々苦しみを重ねてもきた。11月開催となった前年大会最終日、「苦手意識が出ている」と詳細は伏せながら口にした。「グリーン上での苦手意識が今はある。他のコースで感じない部分をオーガスタでは感じる」というのが真相だった。

世界に誇る得意のアイアンショットにしても、近年は内心で苦戦を感じるようになっていた。「オーガスタは傾斜地のショットが多い。そういうショットは米国よりも日本の方が多い。だから(キャリアの)最初の方がショットも安定していたのかなって」。2014年からPGAツアーを主戦場にし、武器であったはずの日本での感覚が次第に薄れてきてもいた。「そこを克服しながら、グリーン上をどうにかしないとオーガスタでは勝てない」――。

アドレナリンの出た最終18番も冷静に寄せてボギーフリーで終えた(提供:Augusta National Golf Club)

周囲の期待とは裏腹に、自身のそれはしぼまないようにと必死だった。しかも2017年8月の「WGCブリヂストン招待」でツアー5勝目を挙げ、翌週の「全米プロ」で惜敗して涙を流してからタイトルは遠ざかった。18年以降は1Wを替え、試行錯誤の繰り返し。シーズン最終戦「ツアー選手権」への7年連続進出という、現在継続中の選手としてはほかに1人(パトリック・リード)しかいない安定感を誇示しながら、悩みは深かった。

そんな状況が続く中、ひとつの転機は数カ月前。今年、コーチとして目澤秀憲氏を迎え、スイングを抜本的に見直し。データ分析に優れる目澤氏の理論に触れ「自分ひとりでフィーリングだけでやっていた部分があり、自分が正しいと思い過ぎていた」ことに気づいたという。

寝食をともにし、ツアー現場でのコミュニケーションを通じて長時間の練習が続いた。新しいスイングを求めながら、直近の数週間のうちにも「もう、無理だ」と投げやりに帰りの車に戻った日もあった。それでも自分の出来に目を凝らし、前日からのわずかな進歩も喜ぶようになった。「今は客観的な目を持ってもらいながら、正しい方向に進んでいると思っている。今年は良い成績が出ていないが、今週は3日間良い成績が出ている」。最終日も一歩でも前へ。そこにグリーンジャケットがある。

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