2021年 バレロテキサスオープン

「記念すべき1勝」ケガと重圧乗り越えスピースが1351日ぶりV

2021/04/05 10:25
17番バーディパットを沈めて拳を握るジョーダン・スピース(Steve Dykes/Getty Images)

◇米国男子◇バレロテキサスオープン 最終日(4日)◇TPCサンアントニオ(テキサス州)◇7494yd(パー72)

ウィニングパットは30㎝もない。カップからボールをゆっくりと引き上げ、同伴競技者たちとハグを交わす。最後に少しだけ長く、キャディのマイケル・グレラー氏と抱き合ったジョーダン・スピースの顔は穏やかだった。勝利の味を噛みしめたのは2017年のメジャー「全英オープン」以来、実に1351日ぶり。通算12勝目は故郷のテキサスで最も長く続く、初回大会からちょうど100年目のトーナメントでつかんだ。

最終組の3人が激しく競い合う展開でスピースは前半2番(パー5)からの2連続バーディで前に出た。「週末は全然ボールをコントロールできなかった」と状態は決して良くなかったが、スコアメークに集中。「パニックになってスイングの感触をいじるようなところだったけれど、『自分のやっていることは正しい。やってきたことにトライしよう』と言い聞かせた」

自分も4年ぶりの勝利がかかる一方で、チャーリー・ホフマンは次週「マスターズ」への出場権が欲しい、マット・ウォレス(イングランド)は米ツアー初勝利でシードが欲しい。「彼らのほうが大きなものに向かってプレーしている」。キャディのそんな言葉が気持ちを楽にしてくれた。終盤1打差に詰めてきたホフマンと同じ「66」をマークして逃げ切り。「何度も自信をなくして前向きになることが難しかった。記念すべき勝利だ」と笑った。

強いスピースが戻ってきた(Steve Dykes/Getty Images)

メジャー3勝の順風満帆なキャリアに変化が及んだのは2018年の初めだった。ウェートトレーニングの最中、左手にケガを負った。骨がわずかにかけていたが「大した問題じゃないと思っていた」と手術を拒み、クラブの握りを変えることで対応。その結果、「どんどんウィークグリップになってクラブのフェースが開くようになった。インパクトで手を返すから、タイミングも重要になった」と深みにはまった。

今年に入ってからは2月から3回のトップ5入り。首位で最終日を迎えたのも今回が3回目だった。復活の兆しが見えたのは、患部の痛みが癒えてきたことも理由のひとつ。また18年の半ばからは周囲の声から身を守り、ツアーの情報からは距離を置くようになったという。「唯一の雑音はインタビュールームだけなんだ。勝つことを期待されるから」。若くしてスターになったからこその重圧と戦う術も、人知れず模索していた。

「厳しい日々でいっぱいの道だったけれど、僕が自分を信じられなくなったときでも、僕を信じてくれる人たちがそばにいてくれた。妻(アニー夫人)が寄り添ってくれていた。これが(2018年に)結婚してから初めての優勝でもある」。マスターズを前に27歳の役者がウィナーズサークルに帰ってきた。

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