「お金よりトロフィ」ダスティン・ジョンソンが最強証明の年間王者
◇米国男子◇ツアー選手権 最終日(7日)◇イーストレイクGC(ジョージア州)◇7346yd(パー70)
求めてやまなかったタイトルをつかんだダスティン・ジョンソンは、駆け出しの頃の記憶を呼び覚ましていた。
「2007年にQスクール(予選会)の3ステージすべてを通過してツアーカードを手にしたとき、たしか2万5000ドルの小切手をもらったんだ。銀行口座には数百ドルしかないような頃だったから、金持ちになったなって思ったよ」
2万5000ドルで懐が温かくなっていた青年は、時を経て1500万ドル(約16億円)のビッグボーナスを勝ち取った。「(タイトルスポンサーの)フェデックスには感謝している」とした上で続けた。「お金よりも、このトロフィが欲しかったんだ」
最終戦進出はツアー最長の12年連続(※)。同じくポイントランク1位で乗り込んだ16年大会は最終日首位からロリー・マキロイ(北アイルランド)に逆転でタイトルをさらわれた。
5打差をつけて出たこの日は6番(パー5)までに3バーディを先行させたが、7番、8番と連続ボギーをたたいた。「間違いなくターニングポイント。ビッグパットだった」と胸を張ったのが後半13番。2サム同組のザンダー・シャウフェレに2打差まで詰められて迎えたホールで6.5mのパーパットをカップの奥に当てる勢いでねじ込み、拳を握った。その後も堅実にパーを並べ、最終18番(パー5)を“マンデーバックナイン”唯一のバーディで締めた。
昨年フォーマットの変更を挟んだものの、最終戦をポイントランク1位で迎えて年間王者に輝いたのは09年のタイガー・ウッズ以来と久々の逃げ切りでもあった。シーズン唯一のメジャー「全米プロ」2位、プレーオフシリーズに入っても「ザ・ノーザントラスト」を通算30アンダーで制し、「BMW選手権」はプレーオフ敗退の2位、そして最終戦は10アンダースタートのハンディキャップを生かして通算21アンダーと首位を譲らず完全優勝。シーズン最終盤を圧倒的な強さで駆け抜けた。
出場3試合連続優勝を飾り、初めて世界ランキング1位にも到達した17年の春と比較し「似ているね。でも、もっといいプレーができる気もするんだ」とうなずく。その17年は最高の状態で迎えるはずだった「マスターズ」直前、コース近くに借りた家の階段から転落して腰を強打。無念の欠場を余儀なくされた。
コロナ禍で延期された「全米オープン」が目前に控え、11月には「マスターズ」も待つ。「ワクワクしているよ。明らかにいいプレーができているし、自信を持って臨める」。最強への歩みは止まらない。
※2013-14年シーズンは8月以降の「ツアー選手権」を含めた全試合を欠場するも、ポイントランク30位に入っていたため最終戦進出記録は継続中。