日本を経由した“世界一タフな男” イム・ソンジェが21歳でV
◇米国男子◇ザ・ホンダクラシック 最終日(1日)◇PGAナショナル・チャンピオンコース(フロリダ州)◇パー70(7125yd)
イム・ソンジェ(韓国)がトミー・フリートウッド(イングランド)との米初タイトルをかけた争いに勝った。日本ツアーから羽ばたいた21歳は、“ベアトラップ”と名付けられた15番(パー3)からの難関3ホールで2バーディを奪取するなど「66」をマーク。通算6アンダーとして逆転優勝を飾った。
高校在学中にプロ転向し、2016年に本格参戦した日本ツアーで2シーズンを過ごした。優勝こそなかったが、17年に賞金ランク12位で新人王を獲得。同年に米下部ツアーの予選会を通過すると、18年の初戦でいきなり優勝。PGAツアーに昇格1年目の昨季フェデックスカップポイントランキングで19位に入り、今度は米国で新人王に。そして2年目の今季、すでに3度のトップ10入りを決めたあと初優勝にこぎつけた。
順調なステップアップは無尽蔵の体力と熱意が原動力。ここ2シーズンで世界ランキングポイント対象の試合に71試合出場している。ランク1000位以内の選手で最多だ。「今年はテキサスの試合を休むかもしれないけれど、出られる試合は全部出ようと考えている。PGAツアーでプレーできることが幸せ。大変だとは思わない。僕は好きなことをやれているんだから」。昨年12月には「プレジデンツカップ」で松山英樹らと世界選抜の一員として米国選抜と戦った。「きょう感じたプレッシャーはプレジデンツカップのときよりも少なかった。経験が前進することを助けてくれた」
今大会、初めてキャディに起用したアルビン・チョイは、コース近隣のジュピターに住む韓国系カナダ人のプロゴルファー。米下部ツアー参戦時に一緒にプレーした縁からできたタッグで、難コースを攻略した。
「今夜は人生で一番幸せな夜になる」と勝利の味を噛みしめた優勝会見では、1日時点で母国で3700人以上の感染者が発見された新型コロナウイルスに関する質問も飛んだ。米国はイラン、韓国、イタリアの一部地域を対象として新たな渡航を制限。イムは最高の時間に浸りながらも「正直言って、気になっています。とにかく祈るしかありません。これ以上、多くの人に影響することなく、早く事態が収まってくれるといい」と故郷に思いを馳せた。(フロリダ州パームビーチガーデンズ/桂川洋一)