USGAとR&Aが発表した「飛距離考察の報告書」そもそもどんな中身なのか
USGAとR&Aが「飛距離考察の報告書」と題した文書を共同でリリースしたのは2月上旬のこと。結論だけで15ページ、詳細は実に102ページという大著だが、その中身はゴルフ界の今後に大きく影響するので、その概要を紹介したい。
両者(USGAとR&A)は、2002年にも共同声明として「これ以上、トップレベルでの飛距離増加は望ましいものではない。それが、道具の進歩、選手のアスリート化、コーチングの改善やコース状況の何によるものであれ、ゲームのチャレンジング性を大きく損なう影響がある」と懸念を表明した。今回は、それに対する取り組みの具体的な方向性を示すものだ。
◆結論の概要
まず、「飛距離およびゴルフ場の総距離は、この100年以上伸び続けている。この傾向は望ましいものではなく、ゴルフにとっては長期的に有害である。それは2つの理由による」として、以下の理由を挙げている。
1.(ショットの種類や打つべき距離、創造性を発揮する機会が少なくなることで)ゴルフコースが本来持っている戦略的チャレンジが失われる。
2.(コスト増や環境負荷増大などを引き起こし)ゴルフコースの総距離が長くなる傾向は、すべてのゴルファーとゴルフ自体に悪影響を及ぼす。
さらに、「われわれの視点では、この傾向は距離を不必要に重視することを助長しており、次世代のゴルファーたちは、より飛ばすということを期待している。われわれは、飛距離というものは根本的にはホールの長さと競う相手との相対的なもので、ゴルフに必要不可欠な特徴と技術への挑戦は、絶対的な飛距離やコースの長さによるものではなく、ゆえに飛距離やコースが伸びたとしても、ゴルフがより魅力的なゲームになるものではない」という。
また、一般ゴルファーに関しても、次のように触れている。「この相対的な飛距離という考え方は、エリートレベルではないゴルファーにも影響がある。われわれは、一般ゴルファーたちが必要以上に長いティからプレーしており、結果的にプレー時間が長くなっている、と信じている。特に、多くのコースのフロントティは、そこからプレーする多数のゴルファーにとって、長過ぎるという懸念を抱いている」とした。
そのために、「この飛距離およびコースが伸び続けている傾向を終えることが、今後何十年にもわたってゴルフが生き延びていく最善の道だと信じる」と断定した。
◆次のステップ
それを実現するための方針、および日程も示している。
「この課題には多くの個別の問題や視点、利害が絡んでいるということを認識しつつ、実現可能性のある将来的な解決策を検討、評価していくことが次のステップになる。同時に、これらは、アスリート性やスイング技術の向上など、選手個々の能力に関する分野にフォーカスすべきものではないことも認識している。ゆえに、これらの研究や評価は、コース設計やコースセットアップの調査とともに、プレーヤーの用具に関する規則がおもなトピックスとなるだろう」
クラブとボールに関しては、以下に例示する項目を含んだ、飛距離を制限するためのオプションを検討する幅広いレビューを行っていくという。
1.飛ばないクラブ、飛ばない球を使うといったローカルルールを導入すること。
2.直接的、間接的に飛距離に影響を与える用具に関する仕様・設計規則の修正および追加。ただし、現時点ではすべてのレベルのゴルファーの飛距離減となる修正は意図していない。
このリリースの発表(2月4日)から45日以内に、より細かな検討項目についての案内を出すとしている。そして、各メーカーからの意見や情報収集に9~12カ月をかけ、その後に調査結果と収集した意見の評価をして、USGAとR&Aが新たな規則を提案することを決定した場合、各メーカーはさらにその規則決定のプロセスに意見する機会を与えられるという。なお、このステップに割り当てられる時間は、提案される新規則の内容によるということだ。