2019年 ZOZOチャンピオンシップ

タイガー・ウッズが求める理想のゴルフボール

2019/10/23 21:50
ウッズが愛用するのはツアーBのXSだ

試作品を作って、試打してもらう。そのフィードバックを元に改良を重ね、新たな試作品を作り上げる。そして再び試打してもらう。ブリヂストンスポーツ株式会社の新しい「ツアーB Xボール」「ツアーB XSボール」は、タイガー・ウッズとこのやり取りを3度繰り返して完成品にたどり着き、11月中旬に実戦投入される予定。そして来春の販売が決定した。

「ZOZOチャンピオンシップ」でウッズ本人に完成品をお披露目した際、ウッズから直接ゴルフボールへのこだわりを聞く機会を得た。ここにボール選びに関する彼の哲学を紹介したい。

■すごいことじゃないか!

まずは、新しいボールの印象を教えてもらえますか?

今年初めのテスト段階から、飛距離はアップするのに、グリーン周りのスピン量が変わらないことに気がついた。ショートアイアンは自分の“ウィンドウ”に収まっているし、もう一つ重要な要素として、いつも話していることだけど、パッティングの音が気に入った。強く打っているようなカチッという硬い音は好きじゃない。だから、パットもショートゲームも変わらずに、飛距離だけが少しアップした。これって、すごいことじゃないか! 普通は、飛距離を得たら、グリーン周りでなにかを犠牲にしなくてはいけないけど、このボールはそうではなかったんだ。

ショートアイアンではスピンが多く入り、ロングアイアンはスピンが少ないので高く上がるものがいい。特にグリーン周りでは、低く出て強いスピンがかかるものが好きだ。スピンが少なく浮き上がってしまうボールはダメだ。グリーン周りでは、たくさんのスピンをかけてアグレッシブなプレーをしたい。スピンを少なくするのは自分の仕事。多くのスピンがかかるボールが好みで、スピン量は自分の手(技術)で減らしたい。

■年を重ねても不変の“ウィンドウ”

あなたにとっての“ウィンドウ”とは、どういうものなのですか?

ちょうど、ビルの窓に向けて打っていくようなイメージだよ。空中にある(想像上の)窓で、もちろんクラブによって異なっている。それぞれのクラブでテストしたとき、球が自分の“ウィンドウ”を通過しないと問題だ。空力性能の向上によって、だんだん“ウィンドウ”に速く到達するようになっているけど、それが決まった高さにあるということが大切だ。

自分は利き目の左目を使ってインパクトを見る。もし、利き目が右目だったら、多くの人が頭を(飛球線方向に)回してインパクトを見ようとするから、“ウィンドウ”も早く見える。利き目が左目だと、頭を少し長く下げているので、弾道を見るのも少し遅くて、それを捉えた時にいつもの位置に球がないと、この球は自分に合っていないのでは?と不安になるんだ。頭を回して球を見たとき、いつもの場所に球があることを期待しているんだ。

自分のキャリアを通して、その“ウィンドウ”の位置はほぼ変わっていない。アイアンのロフトは変えていないし、同じシャフト、同じ長さのものを使っている。モデルは変わったけどね。でも、若かったときと同じように、8Iで160ヤードを打てている。昔と同じ初速を出せているのだけど、それは新しい球(の性能)のおかげだ。

そう、飛距離はあまり変わっていない。むしろ少し伸びたくらいだ。最初にツアーに来た頃は296ydとか298yd、もしくは300ydを少し超えるくらいだった。(スイングする)スピードや、球を潰す力は衰えたけど、自分のゲームは何年も変わっていない。球が助けてくれるおかげで、同じ飛距離を維持できている。なにが変わったかというと、他のみんなが300ydとか320ydを打つようになったことだ。

■アマの方が恩恵は大きい

アマチュアゴルファーのボール選びへのアドバイスは?

いま、市場にはたくさんの種類のボールがある。たくさんプレーする人は、たぶんスピンの多いものが良いと思う。あまりプレーしない人は、飛距離の得られるものが良いと思う。自分はいつもコントロールすることを楽しんできた。アイアンショットをコントロールするために、飛距離は少し犠牲にしてきた。だけど、ボールの進化によって、飛距離を得ながらアイアンのコントロール性能も失わずに済むようになった。いまはボールのカバーやコアにいろいろな硬さがあって、昔と違ってさまざまなスイングスピードでも性能を最大限発揮できるようになっている。だから、我々プロにとって以上に、アマチュアゴルファーにとっての恩恵が大きくなっているね。

ウッズに新ボールを初披露するBSの甲斐氏(中央)と木村氏(左)

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