2019年 セーフウェイオープン

「はじめてのワイン入門」Napa, California

2020/01/13 11:52
ワイン樽が並ぶ姿は圧巻

清涼な空気に包まれたワイナリーに着いたのは、月曜日の朝9時半。どうやら一番乗りだった。ここでは毎朝10時から、みっちり3時間のワイナリーツアーを体験できる。とはいえ、「すでに定員に達しているので、欠員が出たら連絡します」というのがきのうの連絡。このチャンスを逃したら、次はいつ来られるかわからない。それに、誰かがドタキャンしても近くにいないと参加できない。だから、ともかく早く来てみたのだ。

(これは取材で世界を旅するゴルフ記者の道中記である)

事務所にいた女性スタッフに事情を話すと、「調整してみるわ」と優しい笑顔を向けてくれた。ツアー料金は75ドルだが、その金額以上のワインを買えば無料になるというリーズナブルな価格設定。ちらりと目に入ったテーブルの上には、すでに数人分のワイングラスが綺麗にセットされている。ここにいまさら加われるのか?いや 1人ならなんとかなるのでは?でも、もしダメと言われたら…?そんな揺れ動く心境は、「大丈夫よ!」という明るい声にかき消された。あぁ、来てみて良かった。

ツアーガイドはワイナリーオーナーのヘンドリー氏(左)

そのうちに、ぞくぞくと参加者たちが集まってきた。みな2人組のペアだった。案内してくれたのは、ワイナリーオーナーのジョージ・ヘンドリー氏。話の要所で「コッ」と舌を鳴らす、土の匂いが染み付いたような人物だった。

まずは、ざっくばらんな質疑応答から始まった。「来る途中、青々としたぶどう畑があったけど、ここの畑の葉っぱは黄色い。違いはなんですか?」と一人が聞いた。ネガティブな質問に聞こえたが、ジョージは落ち着き払ってこういった。「ああいう風にはなりたくないね。通常、乾燥期が始まる4月には葉の成長が止まる。それで果実に栄養が回るけど、まだ葉が青いっていうことは、果実に行くはずの栄養が葉の成長に使われているってことだから」。それまで、枯れて貧相に見えていた目の前のぶどうの木が、とつぜん黄金色に輝きだした。

こういうふうに葉が黄色くなっているのは健全な証拠

ぶどう畑を歩きながら、ジョージは房から1粒をつまみとった。指で優しくはさんで、透明の果汁を反対の手に垂らし、皆に見せてから舐めとった。次にその粒を口にふくんで種を取りだし、皮から赤い汁をしぼり出した。最後に種を噛んで味わった。「やってごらん」。果汁、皮、種。それぞれが、ワインの味と色に影響することを丁寧に教えてくれた。

はやく本物を飲みたい気持ちをぐっとこらえ、工場ではワインの製造工程に耳を傾けた。この頃には他の参加者たちも、どことなくうわの空になってきた。機は熟したようだ。事務所に戻ると、いよいよお待ちかねのテイスティングが始まった。

手摘みをしているというぶどうたち

まずは白ワインを3種類。爽快なアルバリーニョと、オーク樽未使用のシャルドネ、樽熟成されたシャルドネがサーブされた。順番に飲んでから最初に戻ると、ほとんど味がしなくなっている。テーブルに用意されたクラッカーをひと切れ食べると、不思議と味が復活した。「“テノン”だよ」とジョージは言った。

赤ワインもピノ・ノワール、プリミティーボ、ジンファンデル、5種のブレンド、最後にナパを代表するカベルネ・ソーヴィニヨンまでを丁寧に飲み比べた。ジョージは何度も“テノン”という単語を口にした。「“テノン”が強いカベルネは、ステーキなど脂っこい料理との相性がいい。逆に繊細な魚料理には“テノン”が弱いシャルドネなどがマッチする」。

あとでグーグル先生に教わったのだが、わかる人はわかるだろう。“テノン”の英語表記は「tannin」、日本語では「タンニン」がその訳となる。これだけ飲めば1000円と1万円のワインの違いは当てられそうだ。ワインを覚えたのもうれしいけれど、新しい単語を実地で1つ覚えるのも悪くはない経験だ。(編集部・今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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