2018年 全英リコー女子オープン

神経質な父とメジャーV ジョージア・ホールの家族の物語

2018/08/06 12:26
「神経質」という父と2人で

◇海外女子メジャー◇全英リコー女子オープン 最終日(5日)◇ロイヤルリザム&セントアンズGC (イングランド)◇6585yd(パー72)

親子は極上のストーリーを書き上げた。1打差2位で出た22歳のジョージア・ホール(イングランド)が「67」で回り、通算17アンダーで逆転優勝した。欧州ツアーから今季本格参戦した米ツアーの初優勝をメジャーで飾った。キャディを務めた父・ウェインさんにとっても悲願だった。

同じ最終組ポルナノン・ファトラム(タイ)と2人旅の展開になり、終盤に勝負を決めた。後半16番にバーディを奪い、初めてトップに立った。パーとした17番でファトラムがダブルボギーをたたき、3打差にした。「最後はちょっとした運」。2004年のカレン・スタップルズ以来のイングランド出身チャンピオンに地元の観客から惜しみない拍手が送られた。

ニック・ファルドが3度目の「マスターズ」王者になった1996年に生まれ、名前はオーガスタナショナルGCのあるジョージア州にちなんだ。元トップアマチュアの父に7歳からゴルフを教わった。

父は貿易関係の仕事をしていたが、決して裕福ではなかった。アマチュア大会に優勝し、米ツアーの出場権を得たときも遠征費がなく辞退した。「もっとお金があれば、わたしにチャンスはあると思ったこともあった」。思春期には、父が自らのゴルフ用具を売って費用を工面したことを知らず、文句を言った。

たたえ合う2人。ホールは父と夢をつかんだ

4年前にプロになり、主戦場とした欧州ツアーでは2016年に初優勝した。昨年に米ツアーの予選会を突破し、恋人でもあるキャディと米大陸を転戦。「楽しさはあるけど、家族と会う時間は本当に少なくなった。移動や時差もきつい」。慣れない環境でトップ10はこれまで1回だけだった。

前週「女子スコットランドオープン」から、父に久しぶりにキャディを頼んだ。「すごく神経質だけど、わたしをここまで成長させてくれた人」。ウィニングパットを決めると、ほんの一瞬、父に抱き上げられた。「そのときをイメージしながら、ずっとやってきた」と涙した。その後はすぐに母や恋人と抱擁を交わし、父娘が多く話すことはなかった。とっておきの喜びを静かに分かち合った。(イングランド・リザムセントアンズ/林洋平)

2018年 全英リコー女子オープン