渋野日向子は号泣「声援で頑張れた」 キャディ陽性、パー3で4度池ポチャ
◇米国女子メジャー◇KPMG全米女子プロゴルフ選手権 3日目(26日)◇アトランタアスレチッククラブ・ハイランズC(ジョージア州)◇6831yd(パー72)
大会2日目の終了後、日本への帰国のためのPCR検査で藤野圭祐キャディに陽性反応が出た渋野日向子。自身は陰性だったものの、プレーが続行できるかは同日夜の時点では不明だった。この日の朝、コースに着いてからの再検査でも陰性が出て、プレー可能と判断された。
キャディのほか、行動をともにしていたマネジャー、トレーナーもコースへの入場は許可されず、英語を話せない渋野が一人きりという緊急事態。「(キャディなしで)セルフでやろうかと思ったけど、(規則で)ローカルキャディをつけなきゃダメだって言われて…」。地元在住で、当地と近隣のイーストレイクGCで12年キャディとして働くユスフ・ワジールディン氏(50歳)に急きょバッグを担いでもらった。
プレー中に渋野は自身で歩測をして、風を読み、さらに今大会で使用が認められている距離測定器も使って情報を集めていく。だが、10番から出て、1つスコアを伸ばして迎えた17番(パ―3)で悲劇は起きた。
池越えとなるパー3は実測143ydで、ピンは手前のグリーンエッジから5ydに立っていた。8Iで打った第1打は、「ちょっと当たりが悪くて…」と、わずかに届かず池へと消えた。ドロップゾーンからの3打目をロフト52度のウェッジで打つと、再び池へ。5打目も池。7打目を打つ前に46度にクラブを替えたが、再び手前の池に落として、ようやく9打目でグリーンオン。1パットで沈め、1ホールで+7の「10」とした。
「(ドロップゾーンからは)距離を間違えていて…。もう1つ前のティグラウンドの距離でやっちゃっていて、それにまったく気づけないくらい動揺していました。グリーン上で『あれ違うな』って思って、自分って馬鹿だなっていう感じでした」とうなだれた。
それでも、折り返した後半に3バーディ(1ボギー)と1つずつ巻き返した。「(キャディの)ユスフもめっちゃ優しかったし、心強くてありがたかった。結果的に(セルフじゃなくて)よかったです」
ロープ外には多くの日本人ギャラリーも付き従い、1つのショット、1つのパットに対して「ナイスショット!」「入れ!」という声援が飛び続けた。4つあるパー5のうち、3つできっちりとバーディを奪い、池に囲まれた左端にピンが切られた4番(パー3)も「めっちゃ怖かった」というものの、6Iで右3mにピタリとつけてバーディとした。終わってみれば4オーバー「76」。「10」を叩いた1ホールを除けば、3アンダーのラウンドだった。
ホールアウト後、渋野は「本当に不安だらけだったけど、回りきれてよかったです」というと、こらえてきた涙がポロポロとこぼれ落ちた。「本当につらい中、みなさんの声援のおかげで最後までがんばれました」
いつも7、8個はキャディバッグに入れているというボールだが、この日最後まで残っていたのは、わずかに3つだけだった。(ジョージア州ジョンズクリーク/今岡涼太)