ショートゲームが急成長 渋野日向子「膝カックン」を誘った“粘りのゴルフ”
◇海外女子メジャー◇全米女子オープン 3日目(12日)◇チャンピオンズGC (テキサス州)◇サイプレスクリークコース 6731yd(パー71)
単独トップで迎えた全米女子オープンの決勝ラウンド。渋野日向子はスタートホールから緊張感に包まれていた。「ずっと5cmくらい宙に浮いた感じでした。久しぶりの首位なので余計に。意識しないようにしても、どうやって緊張って解けるんだろうって思っていました」。パーオン率は3日間で最低の61%。耐え抜いて首位の座を守った。
大きなグリーンの激しい傾斜の途中や、左右に切られた厳しいピンポジション。「安全な方(グリーンの広いエリア)を狙うと逆に難しいパットを残してしまう。そう考えていたら(ショットを)引っかけて、左ピンからの傾斜がすごい左(の方)に行った場面もあった」。予選通過者65人の平均スコアは「74.6」。アンダーパーはたったの2人だった。
1バーディ、4ボギーの「74」と耐えて通算5アンダー。「緊張がある中で、アイアンが行っちゃいけないところに行ってしまった。乗っても難しいラインを残した。悔しいですね」と修正点とはしっかり向き合い「きょうは(貯金の)7個なくしてもおかしくなかった。粘るところは粘れた」と強調した。
過酷なセッティングの中で、がまんを続けられた最大の要因はショートゲーム。開幕前の「どこに落とそうか、とイメージすることも今は楽しい」という言葉通り“ガッツパー”を何度も拾った。
3パットでボギー発進となった直後の2番は、左手前の深いガードバンカーから勢いを止めながら寄せてパーセーブ。11番でも、ショートサイドからのバンカーショットをうまくラインに乗せた。「バンカーに自信を持つことによって、パー5でも(第2打をグリーン前の)バンカーに入れてもOKという選択肢ができる」
この日唯一のバーディとした5番(パー5)も、バンカーから寄せての1パットだった。右ラフに飛んだが、13番(パー5)でも第2打で果敢に3Wを持てた。
極め付きは17番。グリーン右手前のティフトン芝混じりのラフに到着すると、傾斜を確認した。落としどころをピンポイントで決め、3打目のイメージを固めた。「クッションよりも上げた方がグリーンに乗る」。優しくウェッジに乗せた球は、右手前に切られたカップをなめて淵付近で止まってパー。両膝を折り曲げて悔しがったことを「膝カックン」と笑ったが「今までだったら打てないような芝の感じだった。イメージ通りにいったときはうれしいですね」と成長への実感がこもった。
夏場の米ツアー転戦の最終戦、前回のメジャー「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の開幕前には課題に挙げていた“耐えのゴルフ”。「アプローチのイメージを作ることが好きになってきているとは思う。粘りのゴルフも、若干できるようになってきたのかな」と謙遜しながら言った。
取材対応を終えて練習を始めたのは午後5時30分。45分間の調整を行い、暗闇の中帰路についた。雷雲予報のため、2時間早まったスタートは午前9時35分。勝てば日本人初のメジャー2勝目になる。苦境を耐え抜き、もがき、はい上がってきた2020年。「目の前の一打に集中して、一個一個を頑張っていくしかない」と誓った18ホールが、フィナーレになる。(テキサス州ヒューストン/林洋平)