<もう一度、この男の話題を。34歳の初体験>
再び、今年のツアープレーヤーNO.1の話題を。まだシード権もなかったのに一夜にして、取り巻く環境が一変した竹谷佳孝。「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」でツアー初優勝を飾った直後から、経験したことのないくらい多忙な日が続き、味わったこともないようなプレッシャーを感じていた。
初V直後の「長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント」での話である。勝った次の試合こそ、真価を問われるとはどの選手も口を揃えることだが、竹谷の場合、より重くのしかかったのは、それがこの人との約束でもあったから。
勝った直後に青木功に言われた。「竹谷、おまえ、次のセガサミーは石にかじりついてでも予選を通れ」。それを実現してこそ初めて一流への第一歩だと説かれて、もともとマジメな性格なだけに「絶対に、青木さんとの約束を果たす」と意気込んだのは良かったが、初日は決勝進出には非常にびみょーな82位タイ発進・・・。
薄氷の思いで迎えた2日目は「もう、空気になってしまいたいと思いました」と笑うほど。「アップアップで出ていって、『もう誰も僕を見ないで』というような、『僕のことはそっとしておいて』というような・・・。そんな心境になってしまって。本当に、こんなにゴルフを難しく感じたことはなかったし、こんなに予選を通りたいと思ったのも、生まれて初めての経験でした」。
晴れて執念の予選通過を果たして、ほっと一息ついたのもつかの間、竹谷の初体験はこの先もまだ続く。今季最強プレーヤーの称号とともに、手にしたのは「WGC ブリヂストンインビテーショナル」と「WGC HSBCチャンピオンズ」の出場権。特に、ブリヂストンインビテーショナルのファイアストーンCCは、屈指のモンスターコースとして知られ、青木にも「長いぞ」と脅されたばかりか、セガサミーカップでは、最終日に同組で回った松山英樹もこともなげに「長いスよ」と、若き経験者の、ありがた~い(?)アドバイス。
ゴクリとつばをのみながら「うん、うん・・・」と真摯に頷く竹谷。松山の脅し・・・いやいや、“アドバイス”は続く。「長くて、深くて、もの凄く難しくて・・・」
「・・・・・・まだ言う?」。
たまりかねて、思わず苦笑いで突っ込んでしまった。とにかく、現地では一緒に練習ラウンドをしようと申し込んで「頑張るよ」。はてさて、いよいよ34歳の初体験は来月初旬。「一体どうなることやら・・・」。いざ本番では、こちらまでなんだかドキドキしてしまいそうだ。