<アジアを駆けるアイアンマンもいよいよ今季最終戦!>
ジャパンゴルフツアーは、今年も「ゴルフ日本シリーズJTカップ」でクライマックスを迎えたが、男たちの戦いはまだ終わっていない。賞金王は、韓国のベ・サンムンの手に渡ったが、それでもなお“頂点”を目指して奮起する選手がいる。
平塚哲二である。確かに、日本ツアーでは賞金ランク9位に終わったが、まだ1試合が残っているアジアンツアーでは現在3位。両ツアーでシード権を確保しているばかりか、初の王座も十分狙える位置につけているのである。
今年は、39歳の河井博大がプロ16年目のツアー初優勝を飾り、43歳の谷口徹はブリヂストンオープンで愛弟子たちに牙を剥き、その谷口と最終戦で激しいV争いを演じた42歳の藤田寛之は、年の最後に連覇を飾った。若手の台頭著しい男子ツアーにあってなお、存在感を放つ“アラフォー世代”の一角を担っているのが、平塚である。
かつて左胸に剥離骨折、左ひざはじん帯断裂と、二重苦を背負いながらも優勝をもぎとったことがある。2003年には深刻な怪我も、体調不良も押し切って29試合のフル参戦を果たし、名前を文字って“哲(鉄)の男”と呼ばれたことも。そして40歳を目前とした今もなお猪突猛進のアイアンマンに、若い世代も賛辞を送る。親しみと同時に畏怖を込めて平塚を「哲兄(てつにぃ)」と呼ぶ。
池田勇太は今年11月に、ともに日本代表として遠征したワールドカップでその生き様を垣間見て驚嘆した。「大先輩なのに、僕のほうが若いのに、哲兄はほんとうに凄い!」と“平成の若大将”さえそのタフネスぶりに、ひれ伏したのである。
日本ツアーと違ってアジアでは、週ごとに国をまたいで歩くという過酷さがある。実際に平塚は今年、イギリス、フランス、韓国、マレーシアにモロッコ、スペイン、インド、タイにミャンマーと、日本を合わせて11カ国で戦った。長時間の移動と体調管理に加えて、行った先々のコースに自分のゴルフを合わせていくという高等技術も求められる。
「調子が良いときに、良い結果を出すのは当たり前の話で、どんな環境でもそのとき最高のパフォーマンスが出来るところが鉄兄の凄さ。悪いなりにまとめる力もあるし、また悪いからといって言い訳もしない。ハートの強さがある」と賛辞を送った池田は、「来年は、自分も挑戦してみたくなった」と平塚にならってさっそく、アジア進出を計画中だ。
「哲兄は、日本の選手はこれだというのを海外で見せつけている」と、池田にべた褒めされた平塚は、「僕はただいろんなところでやってみたいという気持ちが大きいだけなんです」と、照れたように言う。「勇太くんが言ってくれたように、どういう環境の中でも同じゴルフが出来るようにしたい。来年も、今とかわらず出続けて、何試合出ても同じような成績を上げられるように頑張りたい」と、いよいよ40歳の誕生日を迎える来季も、羽を休めるつもりはさらさらない。
11日日曜日はシニアと男子と女子の対抗戦「日立3ツアーズ選手権」に参加したその足で、開催地のタイへと飛んだ。今週は、いよいよアジアンツアーの最終戦。日本が誇る“鉄の男”が最後にとっておきの美酒に酔えるか。