世界最強の男が日本ツアーに残したもの<タイガー・ウッズ>
惜しくも3連覇こそ逃したが、その存在感は際立っていた。2週前のダンロップフェニックスでのタイガー・ウッズだ。
開催直前。水曜日の共同記者会見でのこと。報道陣が、こんな質問をした。「日本ツアーはいま人気がないと言われているが、あなたから見て日本の選手や関係者、メディアのあり方について何か思うところはないか」。それに対するウッズの答えは、次のようなものだった。
「日本の場合、今は本当に強い選手が出にくい状況にあるのだろう。ジャンボさんはとても強く、何年にも渡って日本のゴルフに影響を与えた。ゴルフの人気も上がって、多くの人をひきつけた。何にでもピークはあり、それを過ぎると次の台頭までしばらく時間がかかる。今は、ジャンボさんのような強烈なプレーヤーが出てくるにはまだ、しばらく時間がかかるのではないか・・・」。
ほとんど、即答だった。「え~」とか「う~ん」とか、言葉に詰まる素振りもいっさいなく、淀みなく言い切った。もっともサラっと聞き流してしまえば、それほど特記すべきことではないかもしれない。
しかしいきなり質問されて、その場で他のツアーの歴史や背景を、誰でもそこまで端的に話せるものだろうか。ほかにも、練習場でこんな光景があった。前週の三井住友VISA太平洋マスターズで優勝を飾った中嶋常幸が、ウッズの姿を見つけて歩み寄った。
「今年の全英オープンと、全米プロのお祝いを言いたくて・・・」。しかし、逆に先手を打たれた。中嶋が言い出す前に、「先週はおめでとうございます」と、握手を求めてきたのはウッズのほうだったのだ。
これには中嶋も感激しきり。「52歳で若手に競り勝った気分はどう、なんて言われてね。今週、君と最終組で回れたら面白いだろうな、なんて話をしたんだよ」と目じりを下げたが、これも先のジャンボの話と同じではないだろうか。これから自分が参戦しようとしているツアーの前週の優勝者を、きちんと把握している。
一見、当たり前のことかもしれない。しかし中にはまったく感心を持たないでやってくる、または海外に出て行く選手もいるだろう。誰にでも敬意を示す姿勢は、その場しのぎではできないことだ。来日したその日に、トレーニングで汗を流したというウッズ。そんな1日1日の積み重ねが、彼を世界最強の男まで押し上げたと思わざるをえない。
ゴルフだけではない。振る舞いや思考も超・一流だった。ジャパンゴルフツアープレーヤーたちにとっても、改めてそれを痛感させられた1週間だったのではないだろうか。
トーナメントで起こったルール裁定の実例
<2006ダンロップフェニックス ルーリングシート>
1日目、1番ホール(パー4)セカンド地点で競技委員要請があった。
プレーヤーAとBのティショットの球が接するように止まっており、Bが球をマークしてAが先にストロークしたが、Bの球があった箇所まで削りとられたとの事であった。
競技委員の裁定は、「ホールに近づかず、初めのライから1クラブレングス以内で初めのライに最も近いライにプレースするよう」伝えた。規則20-3b
読者の皆さん、自分のライが変えられても同じようなライにプレースできるので安心ですね。