香妻琴乃はファンの支えも力に 苦難の先に待っていた初優勝
◇国内女子◇マンシングウェアレディース東海クラシック 最終日(16日)◇新南愛知CC美浜コース (愛知)◇6446yd(パー72)
18番グリーン上で行われた優勝インタビュー。ギャラリーからの盛大な拍手に思わず涙がこぼれた。今季はツアー出場権を持たない香妻琴乃が、史上初となるウェイティング(欠場者が出たことによる繰り下がりでの出場)からの初優勝(※)をもぎとった。
「泣くつもりはなかったんですけど。キャディさんに『ゴルフをしていて良かったね』と言われて。ゴルフが嫌いな時期もあったけど、優勝する日が来てすごくうれしい」
3打差を追いかける展開でも焦りはなかったという。最初の1番で5mのバーディパットを沈めるなど、前半アウトだけで5バーディを奪った。イ・ミニョン、アン・ソンジュ(ともに韓国)、岡山絵里と通算14アンダーで首位に並んでいた最終18番では、121ydからPWで2.5mにつけてバーディフィニッシュ。8バーディ、ノーボギーの「64」のプレーで頂点に立った。
プロ8年目の26歳という若さながら、ケガに苦しめられてきた。2014年10月に歩くのも困難な腰痛を発症し、16年は賞金ランキング52位、17年は同63位と賞金シード(同50位以内)を逃してきた。昨年の予選会も三次試験(サードQT)で失敗し、18年は出場試合数が限られることになった。スポンサーへの後ろめたさもあり、ゴルフが楽しくない時期もあった。その中でも、腰痛治療のために電気治療器(約50万円)を購入。大会ごとにホテルに持ち込み、再発の防止に務めた。
シーズン序盤は不振が続いていたパッティングにもキレが戻ってきた。グリーン上で悩んでいた香妻に対し、ファンから父・尚樹さん(54)を通して、平均パット数1位を記録した2014年当時などの映像が届けられたという。「体からボールが離れて手だけで打つ、悪い癖を直しました。よくある私のミスです。体の近くに構えることだけを意識してストロークするようにしました」。この日のパット数も28打と、18ホールを通して安定した。
試練を覚悟していたシーズンは、この初優勝により一変。地元で開催する今季最終戦のメジャー「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」(宮崎カントリークラブ)の出場権も得た。「地元宮崎での試合だし、メジャーで勝つのがこれからの目標」と2勝目に向けてすぐに気持ちを高めた。(愛知県美浜町/玉木充)
※ウェイティングからの優勝は、O.サタヤ(タイ)がツアー通算3勝目とした2017年「ゴルフ5レディス」以来2度目。