「星から来た」チュティチャイ 天国の父に捧げる日本初V
国内女子ツアー「ヨネックスレディス」最終日、ポラニ・チュティチャイ(タイ)が通算10アンダーで並んだ上田桃子とのプレーオフを制し、ツアー初優勝を飾った。ウィニングパットを沈めると両手を突き上げた。4年前に他界した父ブンシューさんの夢だった日本ツアー制覇をかなえた。
4打差の首位でスタートした最終日。しかし、圧勝ムードは、バックナインに入るとすぐになくなった。後半10番でティショットをOB。このホールをボギーとし、後続に逆転を許した。「かなり緊張していた。苦しかった」と、初日にコース新記録「63」を出したショットは安定感を欠いた。
13番でバーディを奪って再び首位に出たが、ピンチは続いた。「自信を持って打てていた」と、頼みの綱はパッティングだった。17番で約5mのパーパットを沈め、ガッツポーズ。18番も約2mのパーパットを決めてしのいだ。プレーオフ2ホール目で花道からの36ydを1.8mにつけ、勝負を決めた。
11歳で本格的にゴルフを始めた。コーチの父は「安定しているツアーに行きなさい」と日本ツアーを勧めた。2012年から本格参戦したが、翌年に向けたサードQT中、病魔に蝕まれた父は死去した。母サタヤさんはファイナルQTを控える娘に伝えなかった。「でも、周りの反応でなんとなく分かります」と当時を思い出し、柔らかな笑みを浮かべた。
ポラニという名前は「星から来た子」という意味。2013年からツアーの登録名を「P.チュティチャイ」にしているが、理由は「長いから省略した」と分かるような分からないような…。日本人には発音しにくいと感じている、父と同じ「チュティチャイ」という苗字を表彰式で呼ばれ、誇らしげに優勝カップを掲げた。
153cmと小柄な30歳は「悩んで眠れない日はほぼない」と常に明るい。これまで下部の1勝だけだった苦節の5年を経て、ようやくツアーの歴史にその舌をかみそうな名前を刻んだ。(新潟県長岡市/林洋平)