完全復活!アン・ソンジュの頭脳プレー
首位と2打差の2位タイからスタートした「ニトリレディス」最終日。ディフェンディングチャンピオンで前週優勝と勢いに乗るアン・ソンジュは、前半からチャージを掛けた。
2番で2.5メートルを沈めると、3番でも7メートルを沈めて連続バーディ。前日の宣言通り、最終組の1組前で存在感を発揮する。圧巻だったのは7番(パー5)。ティショットは同組の北田瑠衣、成田美寿々よりも飛ばしたが、2人が2打目にウッドを使ったのに対しアンは5Iでレイアップ。2人より30ヤード近く手前に刻んだ。
残した距離はピンまで104ヤード。アンは言う。「今週は芝が難しいので、50ヤードから70ヤードくらいを残すと、ダフッたり、逆に(強く打ち過ぎて)距離が出てしまう。100ヤードから105ヤードが52度のウェッジでフルショットの距離なので、初日の後半からはその作戦です」。この3打目をピンそば30センチにぴたりとつけて、お先にバーディで颯爽とグリーンを後にした。
「ショットが“キレッキレ”」とは同組の北田の表現。「アンちゃんが賞金女王を獲ったときにも一緒に回ったけど、今日のショットは今までで一番切れていたと思う」と、舌を巻く。成田も「セカンドで手を放したと思ったのに4メートルくらいについていたし、手のつけようがないですね」と、アンのゴルフに脱帽した。
この日、唯一といっていいピンチは16番(パー3)。直前にリーダーズボードを見たというアンは、「テレサ・ルーの調子が良くて、そこからプレッシャーが掛かってしまった」と、2打差に迫る存在を確認し、8メートルのバーディパットを1.5メートルもショートしてしまう。しかし、これをねじ込みパーセーブ。「あそこでパーを獲れたので、もしかしたら優勝できるかもしれないと思いました」と、打ち明けた。
終わってみれば7バーディノーボギーの「65」。この日のベストスコアをマークして、2位に2打差をつけて悠然と勝利を掴んだ。「先週は最終日にボギーが2つあったので、今日はノーボギーで満足な1日でした」と満足げに振り返った。
この勝利で賞金ランキングは6位へと浮上。だが、「自信はすごく戻ったけど、森田さんは調子の良いゴルフをしているし、女王までは考えられない。賞金ランクトップ5に入れたらいいですね」と謙遜する。それでも、メジャーや高額賞金大会の続くシーズン終盤へ向け、目覚めた大本命の存在は脅威となりそうだ。(北海道苫小牧市/今岡涼太)