飛ばない永井奈都が飛躍した日
国内女子ツアー「マンシングウェアレディース東海クラシック」は、劇的な幕切れでプロ11年目の永井奈都がツアー初優勝を果たした。その永井は自他ともに認める、飛距離の出ないプロの1人だ。優勝が決まった瞬間、プレーオフも想定しパッティンググリーンで練習していた永井の元に駆け寄って祝福した有村智恵は「永井さんは飛ぶ選手ではないですが、自分のスタイルを貫いて勝ったので素晴らしいと思いました」と話す。
当の永井も「私は飛ばないので・・・」という前置きを自身の代名詞のように使うことが多い。前傾姿勢を深く取らず、一見棒立ちのようなアドレスから、すっと持ち上げるテークバック、そしてインパクトから一気に振り上げるフィニッシュ。独特のフォームを確立する永井のショットは、飛距離こそ出なくても左右に曲がることがほとんどない。
今大会の始まる直前「ボールの位置が少し遠くてスタンスも広すぎた」と、練習ラウンドで気づいた永井は、より縦振りの度合いを強めたフォームで3日間戦った。この縦ぶりは理にかなったもので、サイドスピンが押さえられる分曲がりは少ない。そこに今週はスタンス幅を狭めたことで、腰の回転をうまく使うことができ、ドライバーショットはいつもより気持ち飛ぶようになったと笑顔を見せる。
優勝を意識せずに戦って優勝を果たした永井は「実感はまだ沸かないんですが、女子オープンに出られるんですよね」と確認する。2週間後に行われる「日本女子オープンゴルフ選手権競技」の予選会で失敗した永井は、その週には年末に挑戦すると想定していたクオリファイの練習ラウンドを行う予定を入れていた。
ツアー優勝で勝ち得た副産物は大きい。「日本女子オープン」だけでなく、「ミズノクラシック」や最終戦の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」にも出場ができることになった。「ミズノも最終戦もですよね。最終戦は家のテレビで見ているか、クオリファイのサードに出場しているかで、自分には関係ないものだと思っていました」と目を見開く。
そして、なによりも嬉しいのがシード権を獲得し、1年間試合に出続けることができることだ。「明日からのスケジュールが、まったく変わっちゃいますね。まさか優勝なんて思ってもいなかったので。次の目標ですか?今は考えられません。まずは、親に報告して家に帰って考えます」と、いままで支えてくれた両親に嬉しい報告・祝杯を上げてから今後を考えるつもりだ。(愛知県知多郡/本橋英治)