仕切り直した“ウィニングショット”の理由 竹田麗央の完勝劇
◇国内女子メジャー◇日本女子オープンゴルフ選手権 最終日(29日)◇大利根CC 西コース(茨城)◇6845yd(パー72)◇曇り(観衆7154人)
ガッツポーズもなく、いつも通りキャップのひさしをつまんで大歓声に応える。女子ゴルファー日本一に輝いた瞬間としては静かすぎるアクションが、むしろ竹田麗央の強さを際立たせた。「(ガッツポーズをしてみようとかは)なかったです…」。優勝会見で照れくさそうに笑った21歳は、どこまでも自分を貫いて頂点に立った。
大会史上最長の総距離6845yd(パー72)のセッティングで、フェードが打ちやすい右ドッグレッグのホールも多い大利根CC 西コース。3週前の「ソニー日本女子プロ選手権」で今季6勝を挙げていた竹田を優勝候補筆頭に挙げる声は開幕前から少なくなかった。「大会前から、いろんな方に『このコースは向いてるよ』と言っていただいた」
それでも、大事なのは周囲の声ではなく、自分がどう感じるか。「自分で回っていても、確かにフェードヒッター向きだし、距離も必要。自分に合っていると思った。人の意見を気にするのではなく、自分の思った感じでいいと思った」と芯の強さがにじむ。
2年連続年間女王の山下美夢有と並ぶ首位で迎えた最終日最終組の直接対決。圧倒的な飛距離のパワーフェードを前面に押し出し、右ドッグレッグで長いパー4の3番では残り185ydのセカンドを5Iでベタピンに絡めた。前半でリードを奪い、ひとつ前を回る岩井明愛が後半チャージをかけてきても崩れない。
「前回(日本女子プロ)は3打差をつけてスタートした。今回は並んでスタートしていたし、(岩井)明愛選手の追い上げもあった。楽しむというよりは、ミスできないな、と」。しびれる状況で最大のピンチは12番(パー3)。ティショットを大きく右に曲げ、深いラフからバンカー越えのアプローチ。「ボギーを覚悟したけど、ライが良かった」と58度のロブショットでしのぎ、続く13番(パー5)も58度の完ぺきな寄せでバックナイン唯一の貴重なバーディを決めた。
1打リードで迎えた最終18番はティイングエリアでいったん仕切り直した。「(ギャラリーに)電話されてる方がいたので…」。苦笑いで明かした不測の事態にも、冷静に対処。文句なしの一打でフェアウェイを捉え、優勝を大きく引き寄せた。「12番で音が気になったんですけど、そのまま打ってミスショットになった。それで切り替えたのが良かったのかな」
下馬評通りの完勝で袖を通したチャンピオンズブレザーは、元2年連続賞金女王の叔母・平瀬真由美も届かなかったものだ。「歴代チャンピオンはすごい選手ばかり。そこに自分が入れたのはすごくうれしい。あんまり(シーズン中に)振り返ったりはしていないですけど、最後まで、(最終戦の)リコーまで全力で頑張りたい」。メルセデスランキング1位の自分と2位・山下との差は4日間大会2勝分を上回る634.15ptまで拡大。叔母に続く年間女王を引き寄せた今季7勝目にも、自分らしく飛躍の一年を突っ走る。(茨城県坂東市/亀山泰宏)