天国の恩師へ届ける初優勝 安田祐香「勝てない」日々にサヨナラ
◇国内女子◇ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン 最終日(22日)◇利府GC (宮城)◇6638yd(パー72)◇雨(観衆4282人)
「『勝てない』とか『体力がない』とか。気にはしていないけど、そういうコメントは悔しかった」。プロデビューした2020年からきょうまで、安田祐香にはそんな心無い言葉が届いた。
アマチュア時代から苦しみながらも結果を積み上げてきた。日本人で初めて「アジアパシフィック女子アマチュア」(19年)を制し、同年の海外メジャー「エビアン選手権」と「全英女子」では予選通過を果たした。国内ツアーでもアマ時代の全20試合のうち予選落ちを喫したのは1試合のみと安定感は抜群だった。
しかし、コロナ禍と重なった20年以降は首、腰と体の故障に苦しみ「自分を責めることが多かった」。古江彩佳や吉田優利、西村優菜ら同年代の活躍と何度も比べられた。
それでも、「すごく刺激をもらっていた。活躍しているとやっぱりうれしいし、みんなアメリカに行っちゃって少し寂しいけど、ずっと一緒にやってきた選手が世界でも通用するゴルファーなのはすごく誇らしい」と心を乱さず、練習、トレーニングにひたむきに打ち込んできた。年間レースで22年は53位、23年は35位で初シード奪取と成績もあがってきていた。
単独トップで迎えた最終日。悪天候の影響で9ホールの短期決戦にも「スタート前から緊張は少しあったけど強気で臨めた」。中断明けの15番でボギーを喫したが、続く16番パー3を9Iでピンそば30センチにつけるベタピン。バーディでバウンスバックさせ、後続に3打差をつけた9アンダーで念願の初優勝を勝ち取った。
この瞬間を見届けて欲しかった人もいた。今年7月、ジュニアゴルフ塾を主宰していたプロゴルファーで師匠の坂田信弘さんが76歳で亡くなった。
「できれば優勝しているところを見て欲しかった。(訃報が届いて)もう一回、気合を入れ直さないとって。頑張らないと、という気持ちになった」と涙をこぼした。天国の恩師へ最高の結果を届けた。(宮城県利府町/石井操)