臼井麗香「まだ夢を見ているよう」 3年遅れで手にした初優勝
◇国内女子◇アクサレディス in MIYAZAKI 最終日(24日)◇UMKCC(宮崎)◇6545yd(パー72)◇雨
ツアー初優勝の瞬間は、クラブハウスで迎えた。降雨中断から約2時間半経った午前10時50分。最終ラウンド中止の館内アナウンスが流れ、歓声と握手攻めに、臼井麗香は泣いた。
「すごくうれしいっていうのが一番ですが、まだ夢を見ているようで」。ウィニングパットを沈め、ポーズを決める―。かつて宝塚歌劇団を目指し、今も憧れている。その時は「階段から登壇して。私にとっては舞台」というグリーン上ではなかったが、プロ7年目・25歳の歓喜の前ではどうでもいい。
ずっと居場所を求めてきた。後に「黄金世代」と呼ばれる1998年度生まれ。勝みなみ、畑岡奈紗、新垣比菜、小祝さくら、渋野日向子…。「小さい頃からすごい選手ばかりで。“個性を出さないと”と思ってきた」という。
2017年の最初のプロテスト失敗後、人生設計を考えた。引退を30歳と決めて、初シード、米ツアー挑戦、女王獲得の年を設定。MLBドジャース大谷翔平のような“臼井シード”を書いた。
ツアー初優勝を“予定の2021年”に逃し、挫折が始まる。同年2度の2位は5月「サロンパスカップ」の3打差と、7月「大東建託・いい部屋ネットレディス」の5打差。「ものすごく悔しくて、10打差ぐらいの開きがあると思った」。その差を埋めようとスイング改造に取り組んだ。飛距離は出ても左右にバラつくオーバー気味のスイングから、コントロール重視で小さく強いスイングを意識した。
ところが「曲げないように意識して、振ったら曲がるから、振れなくなって」。袋小路に入り、距離が20ydダウン。初シードで臨んだ22年は思った球が打てず「辞めたい」と泣きながら練習した。1年でシードを手放した。戦えるスイングを取り戻すのに、1年以上かかった。
昨年7月「大東建託・いい部屋ネットレディス」の小滝水音以来、黄金世代14人目のツアー初優勝に「みんながどんどん勝っていって、できれば一桁の順番でと思ったんですけどね」と言った。
「私は見た目でスポーツマンらしくないとか(SNSの書き込みで)毎日のように言われます。 “今回は2日(の短縮競技)だし、マグレだろう”と言う人もいると思います。でも、アンチコメントでも見てもらえるのはうれしいことです」と言い、表彰式では「今回の優勝が奇跡と言われないように頑張ります」と笑顔で宣言した。
オリジナルのファッションブランド「Chell classy」をプロデュース。「ファッションからゴルフを始める人もいてほしい」と自分のキャラクターを確立させ、ゴルフと両立させる。そして勝つ。そんな女子プロ、同世代で他にはいない。最強世代で最強の個性。臼井が予定より3年遅れで初優勝を迎えた。(宮崎市/加藤裕一)