「私のブランドを確立したい」 吉田優利を変えた“年間0勝”
◇国内女子メジャー◇ワールドレディスサロンパスカップ 最終日(7日)◇茨城GC西コース◇6780yd(パー72)◇雨(観衆2756人)
後続に2打差をつけて出た最終日、吉田優利は最後まで首位の座を譲ることなく3バーディ、4ボギーの「73」で回り、通算1オーバーで国内メジャーを初制覇した。
優勝争いの緊張感に拍車がかかる終盤、一時は2位の申ジエ(韓国)との差は1打にまで縮められた。迎えた16番、吉田は3m強、フックラインのパーパットを沈めてピンチを切り抜けた。「難しい、良いパットが入りました」。大事な局面で勝負強さを見せつけ、続く17番でバーディを奪取。最終的には3打差をつけて逃げ切った。
昨季は「KKT杯バンテリンレディス」「資生堂レディス」「NEC軽井沢72」「ゴルフ5レディス」「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」と5試合で2位になり、0勝で終えた。涙を流した9月「住友生命-」では、会場のある愛知から師事する辻村明志コーチがいる千葉に新幹線で直行し、すぐさま練習を開始したという。
辻村コーチは「(練習は)1時間くらい。そんな何球をというわけではなく、どうしてこうなったんだろうというのを毎回、毎回突き詰めていた」と明かす。悔しさをかみ締める時間をしっかりと作って敗北と向き合ってきた。
過去には「プロとしての価値は優勝でしか表せない」とも語っていた吉田だが、未勝利の1年を経て、3勝目を飾った優勝会見で思うのは「勝てなかった去年も評価していて、“勝てない=マイナス”はこれからの自分にとってすごく良くない。勝てなかった去年も評価している。1回勝ってほかの試合がダメよりは、安定してずっと勝つ準備ができている方がプロゴルファーとしてあるべき姿だと思う」
負けて気落ちするのではなく、切り替えて次戦に備える。そんなマインドが、ホール毎に切り替える精神力を鍛えたのかもしれない。「18ホールのプランを立てているから」と相手との差が縮まろうが自らのプレーに集中した。大きく考え直して、一歩ずつ歩んできた。
この先の目標は「年間3勝以上」。メジャー制覇で3年シードも手に入れたが、今後のキャリアはこれから練っていくとし、7月に控える「全米女子オープン」(カリフォルニア州・ペブルビーチGL)に向けては「前回出た4年前の全米女子OP(2019年)はけがをしていて、ゴルフがまともにできる状態ではなかった。また出たいなと思って、世界ランキングを上げてきて。行くことができるのは本当に楽しみ。しっかり準備を怠らずに頑張りたい」と意気込んだ。
ともに辻村コーチに師事する姉弟子の上田桃子を含め、尊敬する存在はいる。しかし、「いろんな人を目標にしてきたんですけど、やっぱり自分は自分で、他の誰でもなくて。私のブランドっていうのをもっと確立していけるようにしたい」。憧れるのではなく、憧れられる選手になるのだ。(茨城県つくばみらい市/石井操)