締めは“虎さん”ガッツポーズ 稲森佑貴が完勝で「日本オープン」初制覇
◇国内メジャー◇日本オープンゴルフ選手権競技 最終日(14日)◇横浜カントリークラブ(神奈川)◇7257yd(パー71)
実家が営むゴルフ練習場で、「ゲーム感覚で」距離の書かれた数字を狙っていたという子供時代。正確無比な1Wショットは、その頃から磨かれてきた。ツアー初優勝を「日本オープン」で成し遂げた稲森佑貴の最終日のフェアウェイキープ率は100%。4日間86.7%はフィールド1位で、今季の自己ベストとなった。
最終日は3打の貯金を持ってスタートしたが、守る意識はなかったという。「プロである以上、バーディの奪い合いになる」と攻めに徹した。ボギーが先行したが、9番で10mをねじ込みガッツポーズ。「絶対にショートだけはしたくない」と心に決めた強気のパットをきっかけに、10番も連続バーディ。さらに13番からは3連続と伸ばしていった。
今季、同じ鹿児島出身の出水田大二郎が「RIZAP KBCオーガスタ」でツアー初優勝。出水田より早い2014年に賞金シードを獲得した稲森は「嬉しかったけど、先を越されたっていう思いもあった」と打ち明ける。重永亜斗夢、時松隆光、秋吉翔太ら九州勢も優勝を重ねていった。父・兼隆さんは「あの人たちを越えるには、メジャーで勝つしかないぞ」と課題を与えていたという。
ショーン・ノリス(南アフリカ)が前半3連続、後半に入っても4連続バーディで追い上げてきていることはリーダーボードを見て知っていた。「焦りはなかった」と稲森はいう。「逆に燃えました。僕は追いかけるより、逃げる方が向いているのかもしれない」。
最終18番(パー3)は、ティショットをグリーン左奥に大きく外し、2打目のアプローチも危うく手前のバンカーに落としそうになったが、ボールは辛くもグリーンに踏みとどまった。パターで寄せて、ウィニングパットはわずかに20センチほど。このパットを沈めると、稲森は大きなガッツポーズとともに「ヨシッ!」と叫んだ。
優勝スコアは通算14アンダー。スタート時の通算11アンダーのままだったら、ノリスに抜かれていたことになる。強気に攻めてつかんだタイトル。あのガッツポーズには、じつはモデルが存在する。個性的な動きがツアーで人気の崔虎星(チェ・ホソン/韓国)だ。「あの勢いが欲しい」と羨望の目で見ていた稲森は、「どんな気持ちなのかな」と真似したという。最高の舞台で見せた渾身のガッツポーズ。稲森は「あれができるのは気持ちいいですね」と満面の笑みを浮かべた。(神奈川県横浜市/今岡涼太)