初の賞金王「100点満点とはほど遠い」 池田勇太が“上の上”を求める理由
◇国内男子メジャー◇ゴルフ日本シリーズJTカップ 最終日(4日)◇東京よみうりカントリークラブ(東京)◇7023yd(パー70)
「達成感はあるが、100点満点とはほど遠い。“中の上”ですかね」。2007年末のプロ転向からツアー参戦9年目。30歳で初めてつかんだ賞金王にも、池田勇太の中に心からの喜びはなかった。
優勝して賞金王を決められなかった悔しさが、セレモニーを終えてもなお池田の胸中をくすぶり続ける。2位からスタートした最終日に「66」と伸ばしながらも、通算12アンダーと優勝スコアには1打及ばず。入れればプレーオフとなる最終18番(パー3)では、下りの5mのスライスラインを読み切りながら、わずかにショートし、今季6回目の2位に甘んじた。
2015年5月に他界した祖父・直芳さんから、厳しく言いつけられた言葉がある。「2位もビリも一緒。優勝しなけりゃ意味がない」。祖父がほめてくれるのは、大会で優勝したときだけ。池田が優勝に強いこだわりを口にし続けるのは、祖父の影響が多分にある。
今季3勝を挙げた選手は、池田のほかには谷原秀人とキム・キョンテ(韓国)。理想としていたのは、単独の最多勝で賞金王争いのゴールテープを切ることだった。「やっぱり、プロは勝ってナンボ。2位が6回あってもうれしくない。最多勝で賞金王になれば、オレの中の“上の上”」。最終18番のバーディパット。決めていれば今季4勝目の可能性につなげられただけに、外したときの失望は大きかった。「誰よりも勝って、賞金王を獲りたい。それが自分の目標なのかもしれない」。素直に喜べない理由は、そこにある。
それでも「やっと獲れたという感じ。1年間の頑張りが積み重なったものだと思う」と、充足感はもちろんある。気になるのは、墓前に報告したときの祖父の反応だ。「また厳しい言葉が返ってくると思うけれど“良くやった”の一言くらいは欲しいかな」。長く厳しかったシーズンを終えて人心地がついた30歳は、静かに微笑んだ。(東京都稲城市/塚田達也)