妻に漏らした「覚悟して…」 山下和宏、悪夢の『82』から優勝争い
◇国内男子◇アジアパシフィック ダイヤモンドカップ 3日目(24日)◇茨木カンツリー倶楽部 西コース(大阪府)◇7320yd(パー70)
「みなさん、お久しぶりです」。ツアーきってのジェントルマン・山下和宏が地元で悲願達成のチャンスをつかんだ。4アンダー8位からスタートすると5バーディ、4ボギーと出入りの激しい展開ながら「69」。首位に3打差の通算5アンダーとし、3位タイに浮上した。
1923年に開設された大阪府最古の名門コースは“ホーム”の空気を感じられる。豊中市の自宅からは自動車で15分の距離。ラウンドする機会が年に何度もあり、レストランの従業員らスタッフからも声援が飛ぶ。「地元でやりがいがある。自宅通勤でリラックスもできている」。上がり3ホールで2ボギーをたたいたものの、3日間の平均パット数1.5667は全体1位。逆転可能なポジションを勝ち取った。
昨季までに最終日を最終組でプレーしたのが通算10回。いまだ初勝利に届かない。11月に43歳になる今季は賞金ランキング68位と低迷し、トップ10入りがまだない。
前週の「ANAオープン」。20位タイで迎えた2日目、たまりにたまったものが“暴発”した。4ボギー、3ダブルボギーの「82」をたたいて予選落ち。「自分のコンディションなんかでもナーバスになっていて『こんなに一生懸命練習しているのに何で…』と本当に心が折れた」。キャリアの先行きを不安視し、妻に思わずこぼした。「覚悟をしておいてくれ」
精神的に崖っぷちに追い込まれたのがウソのような“バウンスバック”となっているのが、この3日間だ。「途中から流れが悪くなったけれど、後半16番でリーダーボードを確認したら、なにげに良い位置にいるんだと気付きました。これもゴルフなのかな…と思う」。そう話す表情は、笑うでもなく、悲しむでもなく、何かを受け入れるようだった。
あすの最終日は最終組の一つ前から逆転を狙う。その瞬間を「待望」ととらえているのは、本人だけでも、家族だけでもない。(大阪府茨木市/桂川洋一)