ツアープロもやる「マン振り」の練習 小田龍一の場合
小田龍一の持ち味といえば、180cm、95kgの大きな体を目いっぱい使った豪快なスイングと飛距離だった。それが最近、どうも鳴りを潜めていたという。荒療治を決心したのは「日本ツアー選手権 森ビル杯」2日目のラウンドを終えた後。その甲斐もあってか、3日目は6バーディ、2ボギーの「67」(パー71)をマークし、通算2オーバーの7位タイに浮上した。
大怪我をせずにスコアをまとめたい、毎週安定した成績を残したい。シーズン序盤戦は得意ではなく、目先のつまずきを恐れて気持ちがどんどん萎縮していく。ひとつのミスが大トラブルにつながりかねない宍戸ヒルズカントリークラブなら、なおさらだ。「クラブが全然振れない」。自分の長所がかき消され、2日目には同大会で何度もコンビを組んできた女性のハウスキャディさんにも、ついに言われた。「何やってんですか」――
その後、小田はドライビングレンジで「マン振りの練習」に励んだという。愛用するテーラーメイド M1 ドライバーのロフト角表示は9.5度。これを限界の7.5度まで立てる調整を施した。普段の感覚で打てば、スピン量が落ち、打球が途中でドロップしてしまう。だからスピン量が出るように思い切り振るしかない。フルスイングが必要な状況を無理やり作り、この3日目はこの1Wをそのままラウンドに持ち込んだ。
「気持ちで負けていたらどんどん小さくなる」。最近260yd程度の飛距離に低迷していた1Wショットは、280yd程度まで回復した。「それでも後半は振れなかった。コースにビビって、合わせに行ってしまう」。3mを沈めた10番からの3連続バーディも「完全に運ですね」と取り合わない。ただ、少しでもアグレッシブさを取り戻してスコアメークしたことには満足できた。
この日は同じウエアブランド(クランク)と契約する上平栄道と同組になり、オレンジのポロシャツに白いパンツを合わせ、中年男性のペアルックでプレーした。「僕は外したんですけど、上平が『きょうしかないですよ』って…楽しく回れました」。気恥ずかしさはあったが、極限に難しく仕上がったコースとの対話も目に入らない。戦況よりも、自分のテーマに集中することに役立ったかもしれない。
「予選を通りたい、通りたいというゴルフになっちゃう。やっぱり、もっと上を見て成績を出していかないと」。小田にとっては2009年以来の「日本オープン」以来の国内メジャータイトルをかけて、首位に3打差で迎える最終日。それには目にくれず、3日目もラウンド後はドライビングレンジへと急いだ。(茨城県笠間市/桂川洋一)