銘酒・魔王を生む手で優勝をつかむか プロ3戦目の池村寛世
福岡県の芥屋ゴルフ倶楽部で開催されている国内男子ツアー「RIZAP KBCオーガスタゴルフトーナメント」3日目。鹿児島出身の新星・池村寛世(ともよ)が首位に1打差の通算13アンダー2位タイにつけた。4位タイで進んだ決勝ラウンドで6バーディ2ボギーの「68」をマーク。プロ3戦目での初勝利へチャンスを膨らませた。
同組でプレーしていた深堀圭一郎は終盤、優しくアドバイスしたという。「シャツの“しわ”はあした、取って来よう。最終組だから。アイロンをかける? いやいや、違う。やり方があって…」。朝から、くしゃくしゃだったコットンシャツ。キャップにも、クラブのメーカー以外スポンサーのロゴはひとつもない。真っ白なニューフェースが名手揃いとなった優勝争いに名を連ねた。
6月の下部チャレンジトーナメントを制して今大会に出場した19歳のプロ3年生。この日は4番までに2ボギーを叩いたが「後半の方が得意。午前はイーブンで上出来と思っていました」と落ち着き払い、その後は7番からの3連続を含む6バーディをマークした。
鹿児島志布志市にある実家は、サツマイモ農家。父・聖司さんの影響で10歳のときにゴルフを始めたが、畑の手伝いを教え込まれた方が先だった。土を耕し、苗を植え、収穫する。「全工程ができます」と2人の弟と1人の妹を持つ一家の頼もしい長男だ。「ずっとやってきたので、身長は低いですけど(166cm)、それで体格にも恵まれていると思います」。
そのイモ「紅はるか」は食用であるとともに、のちに銘酒・芋焼酎「魔王」にもなるという。
尚志館高校を2年で中退し、父の勧めでオーストラリアにゴルフ留学した。ゴールドコーストで約半年間腕を磨いてプロに転向したが「ゴルフがダメだったらお前が(家業を)継げ、と言われている」。自分の賞金、貯金でプロとしての経費を賄うのが父との約束だ。
「それが尽きたら試合には出られない。それがプレッシャーにもなっている」。思いは切実。「ぼくはゴルフがしたい」――
自分の手が生む酒の味はまだ知らない。あす30日が20歳の誕生日だからだ。「ツアーで最終日最終組を回れるのも最高の誕生日プレゼントだと思います。あとは、どんなプレーをするかですね」。勝利の美酒の銘柄だけは、きっと決まっている。(福岡県糸島市/桂川洋一)