藤田寛之が16勝目 マスターズへ2度目のリスタート
兵庫県の山の原ゴルフクラブ 山の原コースで開催された「つるやオープンゴルフトーナメント」最終日。藤田寛之が「67」をマークし、通算13アンダーで並んだパク・サンヒョン(韓国)とのプレーオフを制して今季初優勝を飾った。2010年、12年に続く3度目の大会制覇。13年はゼロ勝に終わった12年の賞金王が再び走り出した。
サンデーバックナインに視線をやったリーダーボードの上位は、ビッグスコアで賑わっていた。1打差の3位から最終組でプレーした藤田は、前半の3バーディで首位に浮上したものの、ショートゲームで躓いた11番(パー3)で、ダブルボギーを叩いて一時後退していた。
終盤に入って、12アンダーとした谷原秀人、そして13アンダーでフィニッシュしたパクの名前を確認。追う立場となって迎えた15番(パー5)では残り66ヤードの第3打を、そして16番(190ヤード、パー3)では追い風を浴びた7番アイアンでのティショットをいずれも1メートル以内につけ、連続バーディでトップタイに再浮上。第1打でフェアウェイを逃した17番(パー5)、18番は安全策をとってパーを並べ、プレーオフでもミスの続いたパクを横目に、3オン1パットでパーを拾って退け、山の原で3度目の栄冠を手にした。
10年大会を制し、翌年「マスターズ」に初出場。12年は2度目の今大会優勝を果たした勢いで初の賞金王となって、その翌年オーガスタに舞い戻った。だが、その13年初旬、肋骨を疲労骨折し、すべての計算が狂った。「自分自身、空中分解してしまった」。マスターズ2日目に「85」を叩く屈辱を味わい“中年の星”の輝きは霞んだ。
だからこそ「去年非常に苦しいシーズンを過ごして、オフはその悔しさを晴らそうと頑張ってきた」と言う。6月には45歳になる。視力が落ちたのも感じる。「老化でしょう。最近、リーダーボードの数字になぜか“3”が多く見える」。
一方で体を苛めることはやめない。最近、測った体脂肪率は11%。厳しい自己評価を下す日々は2年前と何ら変わらない。
今週も連日「ショットが不安。優勝できる感じはない」と口にしたが、理想が高ければこそ。「ダメだと言いながらも、チャンスがある時には優勝を目指す。自分が(技術的に)十分ではないと思っていても、他から見たら十分なものを持っているかもしれない」。藤田がこの日の中盤まで、自らに課していたスコアは前半3アンダー、後半3アンダーの「65」で通算15アンダー。「確かに、そこに持って行くことについてはダメ(なゴルフ)だった」
今大会優勝前までの最新世界ランクは214位。「自分は階段を飛び越えていくような目標の立て方はしない」と相変わらず慎重だ。ただ「マスターズの舞台に3度立ちたい思いはある。あの時の充実感、空気感をまた味わいたい。テレビで見ていてもそう感じるんだから」と藤田。大会優勝者に送られる緑のジャケットを羽織って、そう言った。(兵庫県川西市/桂川洋一)