10年前のチャンピオン深堀圭一郎「1回勝っただけでは…」
茨城県の茨城ゴルフ倶楽部 東コースで開幕した国内男子ツアー「日本オープンゴルフ選手権競技」初日。片山晋呉ら3選手が5アンダーの首位タイで並ぶ中、歴代王者の深堀圭一郎は「68」(パー71)で回り、3アンダーの4位タイと好位置で滑り出した。
最終18番(パー5)で2オンからバーディを決めた深堀は、納得の笑みを浮かべながらホールアウトした。午後組のスタートとなったこの日は、後半10番までに4バーディを重ねながらも12、16番のボギーで後退。「大きなミスは右ラフから引っかかった16番のセカンドくらい」という上々の出来だったゆえに、最終ホールのバーディフィニッシュは自信を強く持たせてくれるものだった。
同大会を制したのは2003年。日光カンツリークラブで行われた大会で、最終日に5打差を逆転し、初の日本タイトルをつかんだ。当時はパッティングイップスに苦しんだ時期を経て、手にした念願の勝利だった。
あれから10年。今月9日に誕生日を迎えた45歳は、再び、度重なる故障の苦しみを味わいながらカムバックしてきた。故障で出場がままならなかったせいもあり、昨年は「生涯獲得賞金25位以内」のシード資格を行使しての出場だったが、今年は再び賞金シードを取り戻して出場している。
体のキレは確かに若い頃と違う。当時よりも優れている能力を聞かれると「経験です」と一言。けれど、それこそが今、誇るべきものでもある。
「ダメなものをたくさん経験した。尖がっている自分だけじゃない、ダメな自分も受け入れられるようになった」。
さらに「それは、このトーナメントを戦う上で絶対的に必要なものだと思う」とも。コースが難しくなればなるほど、ミスの可能性や回数は多くなるが、それに固執してばかりはいられないのが日本オープンだ。
思い出すのは昨年大会の開幕前夜、歴代王者たちが集うチャンピオンズディナーでのこと。青木功ら永久シード選手たちから「日本オープンは1回勝っただけじゃ、勝ったうちに入らない」という辛口のゲキを浴びせられた。
「まだそれに、チャレンジできる自分であることが嬉しい。最終日のバックナインで狙える位置にいられたら…」。先はまだ長い。闘志は胸の内に静かにしまい込んだ。(茨城県つくばみらい市/桂川洋一)