比嘉一貴が大会最少スコアで賞金王“当確ランプ” 最終18番で盤石の攻め
◇国内男子◇ダンロップフェニックストーナメント 最終日(20日)◇フェニックスCC(宮崎)◇7042yd(パー71)
タイトルを手繰り寄せたイーグルにも、笑顔ひとつ見せなかった。後半13番、比嘉一貴は5Wでの第1打をドローボールでグリーン左手前のバンカーへ。ウェッジで砂を巻き上げた2打目は20yd先のカップに収まった。歓声にも動じない。「14、15番が苦手なので。『次のホールだ』と気を引き締めた感じでした」。賞金王に“ふさわしい”紛れもない強さが漂った。
同じ最終組の2人に2打差をつけてティオフし、序盤2番、3番(パー3)と6mを立て続けに沈めてバーディを奪った。「通算20アンダー」と「常に2打以上離す」のこの日設定した目標。9番で7Iでの2打目をピンそば1mにつけバーディとし、アウトを「32」でまとめた。
1Wショット不振の不安は、それ以外の13本で解消した。「アイアンショットが良かったので、多少距離が残ってもいい。フェアウェイから打てれば」と堅実にフェニックスCCを攻略。緻密なマネジメントが光ったのは最終18番(パー5)。ティイングエリアで「3打目に100yd残す」と決め、第1打から4UT、5Iと繋ぎ、サードの距離はピンまで101yd。ロフト55度のウェッジでピンそば2mにつける完ぺきな攻めでバーディ締め。やっと、笑った。
後続に背中を見せ続けた「64」で、2016年にブルックス・ケプカが記録した263ストローク、通算21アンダーの大会最少スコアをマークした。恒例の優勝副賞「宮崎牛1頭分」がうれしい。「ケプカも牛1頭が欲しくて戻ってきたと(16年~18年出場)。牛1頭って何kgなんだろう。分割して送ってほしいですけど、家族みんなが喜ぶ」と話した。
コンビを組んで4年目の岡本史郎キャディは目を細める。2013年大会でキム・ヒョンソン(韓国)のバッグを担ぎ、ルーク・ドナルド(イングランド)に敗れた当時の記憶がよみがえった。「一貴は今、あのときのルークみたいなゴルフをしている。飛ばさなくてもステディに」。抜群の安定感は今、比嘉本人が胸を張れるものだ。「19年から出場してきて、今年が一番、(ショットの)練習量は少ない。『これだけやればいい』というものがある。球を打たなくてもチェックできる」。ラウンド後の居残り練習は今週、一度もしなかった。
2017年の宮里優作以来となる年間4勝目で、賞金王のタイトルはもう手の届くところにある。逆転のチャンスが唯一ある2位の星野陸也にも約7425万円差をつけた。残りは2戦。次週の「カシオワールドオープン」(高知・Kochi黒潮CC)で単独8位以上、もしくは星野が優勝を逃した時点で初戴冠が決まる。この状況をもってしても、小さな巨人はたくましい。口元を引き締めて言った。「…もっと、勝ちたいですね」。(宮崎市/桂川洋一)