「59」を生んだ44歳の一目ぼれ 近藤智弘を6年ぶりのプレーオフに導いたもの
◇国内男子◇ゴルフパートナーPRO-AM トーナメント 最終日(22日)◇取手国際GC(茨城県)◇東コース6804yd(パー70)
何本も何本も試して、今週も6本のパターを持ってきた。それが最終日のスタート前、「なんだこの感覚は!」と近藤智弘は雷に打たれたような衝撃を受けた。調子が悪いわけではないが、しっくりくる1本が見つからない。予選ラウンドと3日目でクラブを変えてみたがピンとこず、最終日はオデッセイの「ホワイト ホット OG 2-BALL パター」を握ってみた。
昨年も何試合か使っていたが、今季はこれが初投入。1番で入れた3mのパーパットを皮切りに、面白いようにパットが入った。11バーディを量産して「59」の自己ベストをマーク。通算22アンダー、ホールアウト時点で首位に並んだが「優勝なんて、全然。だって、通算23か24は行くでしょう」。そう話した1時間半後には、優勝争いの真っただ中に立っていた。
最終組の今平周吾、大槻智春が通算22アンダーで終えてプレーオフに突入。近藤にとっては2016年「東建ホームメイトカップ」以来のプレーオフだった。ひとホール目を切り抜けて今平との一騎打ちまで持ち込んだが、決めなければ負けが確定の4m弱のバーディパットは「“入れなきゃいけない”が強く出ちゃった」と決められず。今平の優勝を見届けてグリーンを降りた。
「本当はここで『おじさん頑張ったね』って言われたかったんだけどね」。優勝から離れること8年、来月には45歳を迎える。開幕前の練習ラウンドも、そろそろ疲れを感じるようになってきた。「しんどい」とこぼしたくなる日もあるが、久々の緊張感は「まだまだ、やりたい」と闘争心を刺激する。
長年悩み続けたパターにも活路を見出し、人生初の50台は自信になった。「夢みたいな話だよね。17番のバーディで、一人で盛り上がっちゃった」と上機嫌にはしゃぐ姿は、『おじさん』と呼ぶにはまだ早そうだ。(茨城県つくばみらい市/谷口愛純)