【GDO EYE】初優勝の兼本「泣くやつの気がしれん」と思っていたら…
国内ツアーでも屈指の難コースとして知られる大洗を制したのは、プロ入り17年目の苦労人、38歳の兼本貴司だった。「三菱ダイヤモンドカップゴルフ」最終日、ブレンダン・ジョーンズとの3ホールに渡るプレーオフを制しての勝利。ウィニングパットを沈めた瞬間、しばらく涙が止まることはなかった。
第2戦「つるやオープン」では初優勝の富田雅哉が喜びの涙。続く「中日クラウンズ」では復活優勝の平塚哲司が男泣き。「勝つまでは“泣くやつの気が知れん”と思っていた」という兼本だが、「これまでの努力の積み重ねとかがフラッシュバックのように蘇って…。親の顔も出てきたし、仲間も集まって来たものだから。それでウルッと」と、弁解(?)する姿が微笑ましい。
実家の広島にいる父親の弘次(71)さんは、脳梗塞を患うなど体調が不安定だという。「病弱だけど、弱さを見せないし、元気な姿を見せようとするんです」と兼本。今年の「つるやオープン」では応援に駆けつけ、「お前が早く一勝をしてくれないと困る」と叱咤激励を受けた。「早く勝てて良かったです。これ以上言うと泣きそうだから言いません」と、会見場でも僅かに目を潤ませていた兼本。何よりも、最高の親孝行ができたことに感極まっての涙だったのだろう。
今季の開幕戦から、6月末の「ミズノオープンよみうりクラシック」までの賞金総額で上位2名に残れば、海外メジャー「全英オープン」の出場権も獲得できる。この優勝で賞金3千万円を獲得した兼本は、現時点でその最上位に浮上した。「全英? 行きますよ。僕はローボールヒッターだし、パンチ(ショット)、パンチで行きますよ」。なるほど、風が名物の大洗を制したこともうなずける。今シーズン、さらに多くの話題を提供してくれそうな勢いだ。(編集部:塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。