石川遼が選んだ今年の一文字は『泥』 最終戦で得た学び
ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で今季3勝目を挙げてシーズンを締めくくった石川遼が10日、千葉県内のゴルフ場で取材に応じ、2019年を象徴する一文字に『泥』を選んで色紙に記した。
優勝会見でも繰り返した「泥臭さ」という言葉にまつわる一文字。石川は2日前の戦いを思い起こしながら、その重要性を説き進めた。「綺麗なゴルフをすることが正しい、という感じを持っていたけれど、泥臭く食らいついていく部分のことを忘れていた。僕は上手いタイプのゴルファーじゃない。それを思い出させてくれたことが、すごく勉強になった」
今も記憶に新しい、18番(パー3)で行われたブラッド・ケネディ(オーストラリア)とのプレーオフ。2ホール連続でグリーン右に外しながらもパーを拾い、3ホール目にピン左下2.5mにつけるバーディで決着。しぶとくケネディに食い下がり、巡ってきたチャンスを一発で仕留めてみせた。
石川がイメージしてきた“綺麗なゴルフ”の極致は、「ドライバーは曲がらず、アイアンはピンを刺して、パターが入る」というプレーだ。そんなゴルフへの憧れは、「上手い選手ばかり」という、かつて米国を主戦場にした時期に強まった。今年でいえば、4打差をつけて完勝した「セガサミーカップ」は理想に近いものだったが、「1年間で10試合に1試合くらいの感覚。その『型』にはまらなかったときにどう考えるべきなのか」。シーズン最終戦で見出した答えこそ、対極にあるような「泥臭さ」だった。
「ケネディは上手い攻め方をするゴルファー。(プレーオフの)18番を100回繰り返してスコアを付けたら、ケネディのほうが良いスコアになると思う。でも、ゴルフはそういう競技じゃない。流れが悪いときに食らいついて、流れが来たらチャンスをモノにする。ゴルフは失敗やミスのスポーツであることを忘れていた」。苦しみを乗り越えた先に得たものは、優勝の栄誉だけではなかった。
「ゴルフには、簡単に忘れ去られそうだけど大事なことが結構あるんです。それを忘れては、次の試合に向けても意味がない。日々リマインドしながらゴルフと向き合っていきたい」。そう結んだ石川は「忘れないように持って帰ろうかな」と、『泥』と記された色紙を自らの腕に収めた。(編集部・塚田達也)