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HOT LIST JAPAN受賞クラブ 開発者インタビュー Vol.9(ミズノ編)

2012/10/10 09:00

HOT LIST 日本版」で高評価を得たクラブは、どのように開発されたものなのか。開発担当者や企画担当者へのインタビューから、メーカー側の視点を探っていく。第9回目は、フォージドアイアンで世界に名を馳せるミズノ。アスリートから人気が高いMPアイアンの開発について。さらに発売されたばかりの最新モデルについても話を訊いた。

【担当者 プロフィール】
金山哲也(かなやまてつや)
1994年ミズノ入社後からクラブヘッドの開発に携わる。99年から2年半の間はアメリカに赴任し、2004年からは台湾の制作現場に。2006年からミズノ大阪本社でグローバルゴルフ企画開発室 商品開発課 課長を務める。

【2012 HOT LIST JAPAN 受賞クラブ】
アイアン部門:ゴールド賞(MP-69)
ドライバー部門:シルバー賞(MP THE CRAFT 611)
フェアウェイウッド部門:シルバー賞(MP METAL Ti)
ユーティリティ部門:シルバー賞(MP CLK)
アイアン部門:シルバー賞(JPX AD 800フォージド)

最新の設計技術とクラフトマンシップを融合

GDO:ミズノといえば、軟鉄鍛造のアイアンのイメージが強いですが、今回のHOT LISTではマッスルバックの「MP-69」が見事ゴールド賞に選ばれました。テスターからは、ヘッド形状の良さ、打感の良さが特に高く評価されていました。

金山:ミズノのフラッグシップモデルである「MP-69」に高い評価をいただいたのは、とても嬉しいですね。以前から米国版のHOT LISTは、開発チームで毎回チェックしていましたから。

GDO:米国版のHOT LISTでは、ミズノのフォージドアイアンは毎回たくさんの賞を獲得していますよね。クラブ開発は、すべて日本で行っているのでしょうか。アメリカにも開発担当の方がいるのですか?

金山:同じ開発チームのデスクが、アメリカにもあるといった感じですね。出張もありますし、テレビ会議などで意見交換なども行っています。もちろんブランドによって担当者はいて、現在のMPシリーズを担当しているのは主にアメリカです。ただ、ミズノでは「ヘッド形状=性能」であると考えていますので、PCのCADソフトでクラブを設計してモックアップが上がってきた段階で、養老のクラフトマンがヘッド形状をチェックして手を加えています。正直言って時間と手間も掛かる面倒な作業なのですが、クラフトマンシップを融合ためするには欠かせない工程になっています。もちろん契約プロにも試打してもらって、その意見もフィードバックさせています。「MP-69」は、今でも人気のある「MP-33」というモデルを意識して開発したのですが、おかげさまでその「MP-33」を超えたとの声も頂いています。

GDO:MPアイアンは、オーソドックスなところがゴルファーに人気なのだと思います。ですが、毎年オーソドックスでクセのないモデルを作り出すのは、開発担当として苦労しませんか。行き詰まったりしないのでしょうか?

金山:「次はこうしてみよう」という点がどこかにあるので、開発チームは楽しく新モデルを開発していますよ。料理人のような感覚です(笑)。悪くいえば、MPシリーズはヘッド形状が似かよってくることはありますが・・・。その点でいうと、JPXシリーズではもう少し機能面に寄せた開発を行っています。スイートエリアの広さ、飛距離、打感の良さをバランス良く兼ね備えるように配慮して開発しています。

GDO:MPシリーズからは、「MP H4アイアン」という新しいモデルが発売されますが、このモデルはヘッドも大きく、どちらかというとJPXシリーズのようですよね。

金山:ゴルフに対する向上心はあるけど、MPシリーズはまだ使えないというゴルファーは多くいらっしゃいます。そういった人のために開発したのが「MP H4アイアン」です。性能的にはMPとJPXの中間になるので、これまでのMPシリーズと区別するために名称は2桁の数字ではなくH4としています。

GDO:もうひとつの新モデル「MP-64」は、これまでどおりのMPシリーズらしいオーソドックスなモデルですよね。ルーク・ドナルドが監修したということですが、どのあたりに反映されているのでしょうか。

金山:開発を始めた初期の段階から、ルークからはソールの抜けを良くしてほしいとのリクエストがありました。ですから、「MP-64」は彼の好みに合わせたラウンドソールが特徴になっています。もちろん、ヘッド形状についてもモックアップの段階からルークの要望を反映したものです。試打はシーズンオフにしかできないので、このモデルに関しては制作期間が1年以上掛かっていますね。

GDO:ルーク・ドナルドは、これまでチタンが圧入された「MP-59」を使っていましたよね。

金山:そうなんです。ルークは長い間「MP-62」を好んで使っていたので、「MP-59」にチェンジしたときには私としても意外でした。プロのなかでは、比較的少しやさしいモデルを好むチャールズ・ハウエルIIIあたりが「MP-59」をチョイスするだろうと想定していたのですが。

GDO:開発担当者も想定外だったんですね(笑)。最後にひとつ疑問があるのですが、ドライバーの「MP THE CRAFT 611」には、なぜこれまでなかった“THE”が付いているのでしょうか。

金山:「MP THE CRAFT 611」は、ドライバーの名器と言われた「300 S」をモディファイしたモデルで、今後ずっと愛され続けるように開発しました。このモデルはかなり精度にこだわっていて、製品個体差が少なく、どのモデルを打っても高い反発性能が得られるように作られています。その特別な意味を持たせるために今回“THE”を付けました。「MP-33」を意識して開発した「MP-69」がゴールド賞をいただいたので、個人的にはこの「MP THE CRAFT 611」もシルバーではなく、ゴールドを頂きたかったですね(笑)。