2016年 全米プロゴルフ選手権

マッスルバックかキャビティか?松山英樹「気分転換」の本音を探る

2016/07/29 09:29
「クラブは関係ない」。松山の言葉はシンプルだが深いものだ

ニュージャージー州のバルタスロールGCで開幕した今季海外メジャー最終戦「全米プロゴルフ選手権」の初日、松山英樹は3バーディ、2ボギーの「69」(パー70)で回って1アンダー、21位発進。「まあ、良かったんじゃないですか」と、納得と不満が入り混じった表情で宙をにらんだ。

うだるような暑さに包まれる前の午前7時20分に、10番からティオフした。アイアンをマッスルバック(スリクソンZ945)に戻したこの日、パーオン率は83.3%(15/18)で、フェアウェイキープも71.4%(10/14)と安定した。「フェアウェイ、グリーンと打っていけると楽にプレーができる」と、メジャー大会初日をアンダーパーで回って、首位とは4打差。結果にそれなりの満足感があるのは確かだった。

2つのボギーはともに3パットだったものの、「(グリーン上で)ミスらしいミスは1回だけ」。最初にボギーとした12番で6mのバーディチャンスから1.5mオーバーしたことはミスとしたが、2つめの7番での3パットは、フェアウェイからピン手前15mに載せた2打目を責めるべきだろう。

この日は「33」パット。それでも、ホールアウト後に東北福祉大の恩師・阿部靖彦監督から「お前は良いパットをしていたけど、カップが逃げていたな」と声を掛けられると、「そうなんです、その通りです」と笑って応じる余裕があった。

17番(パー5)では刻んだ後の3打目を1m半につけてバーディ。18番(パー5)では残り245ydの2打目を3Iでピン上2m半につけて、イーグル逃しのバーディとした。

だが“アイアンを戻したことで、すべてが良い方向に向かっている”という空気感に松山は敏感に反応した。「キャビティだって(製品として)悪ければ使わない。気分的に(マッスルバックに)変えているだけ。みんなが心配しているようなことはないです」。

振り返れば、松山は3月の「アーノルド・パーマー招待」で4I、翌週の「WGCデルマッチプレー」では4Iと5I、さらに1週挟んだ「マスターズ」では4Iを、キャビティタイプのスリクソン Z745に変えている(その他のアイアンはマッスルバックのZ945)。それを3週間の休みを挟んだ5月の「ウェルズファーゴ選手権」で、4I~PWまでごっそりと新しいキャビティタイプのZ765に変えたのだ。

より高い球が打ちやすいキャビティタイプのアイアンは、距離が長く、グリーンが硬いコースでは有効な武器となり得る。それは、さらなる進化を模索する中で松山がたどり着いた1つの選択肢だ。ただし、今は「スイングは良い方向に行っているけど、感触はまだ良くない」という状況。松山は「スイングが固まれば、クラブは関係ない。今日はボギーになりそうなところをパーセーブできたのが良かった」と続けた。

マッスルバックに戻した「気分転換」という理由には、多くの本音も含まれている。今季最後のメジャー大会でも、己の信じた道をひたすら突き進むだけだ。(ニュージャージー州スプリングフィールド/今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

2016年 全米プロゴルフ選手権