2014年 BMW選手権

1オン可能なパー4で甦ったアーノルド・パーマーの記憶

2014/09/06 11:49
350ヤード先に見下ろすグリーン。アーノルド・パーマー伝説が残る一つの場所だ

フェデックスカッププレーオフ第3戦「BMW選手権」の今年の舞台であるチェリーヒルズCC。コロラド州のデンバー南部にあるプライベートコースで男子のプロトーナメントが開催されるのは、1985年の「全米プロゴルフ選手権」以来だが、過去には「全米オープン」が3度開催された。その名門クラブの名物ホールが、1番パー4だ。

346ヤードと短く、しかも打ち下ろしのパー4を有名にしたのが1960年のアーノルド・パーマー。全米オープン最終日、全選手のうちただ一人、1オンに成功(当時の距離は313ヤード)。勢いづいたパーマーは、キャリアで唯一の同大会優勝を飾った。

標高約1,600メートルの高地では普段よりもショットに飛距離が出る。グリーン手前に花道はなく、右サイドには細いクリークが流れているのだが、松山英樹も「あの届く距離(打ち下ろし)ではグリーン周りにいるのが一番いい」とドライバーを握り、初日はグリーンの奥まで到達。2日目は右手前のラフまで運んだ。今をときめくロリー・マキロイ(北アイルランド)は、練習ラウンドから3番ウッドでぶっ飛ばしている。

「ドライバブル・パー4(Driveable PAR4)」。1オン可能なパー4は、今年のプレーオフの各会場にも多い。

第1戦「ザ・バークレイズ」のリッジウッドCCの5番ホールは、打ち上げの291ヤード。かつては「5番アイアンと10番アイアン(ウェッジ)で攻めるのが正解」とされたことから「ファイブ&ダイム」と呼ばれた(ダイムは10セントの意)。第2戦「ドイツバンク選手権」が行われたTPCボストンの4番パー4は298ヤードだ。

とはいえ、このチェリーヒルズ1番の「パーマーの記憶」は特別なもの。

開幕前の今週火曜日には、パーシモンヘッドのドライバーに、バラタボールを大会関係者が持ち込み、当時のティから多くの選手に打たせるデモンストレーションを行った。マキロイが最もグリーンに近づくショットを放ったが、グリーンから49ヤード手前のバンカーまでにしか及ばなかった。

「彼は最高のロングヒッターの一人だったんだ。こんなクラブで届いてしまったんだから」とマキロイ。歴史の1ページを覗き込んだ瞬間だった。(コロラド州デンバー/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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