2度の心臓移植を乗り越えたPGAプレーヤーのメッセージ
戦前の予想通り、初日からスコアを伸ばし合う展開となった「チューリッヒクラシック」。リーダーボードの上位に次々とビッグスコアが刻まれていく中で、その1人に6アンダー「66」をマークしたエリック・コンプトンが、首位に4打差の5位につける好スタートを切った。
コンプトンの過酷ともいえるバックグラウンドについて、すでにご存知の方は多いかもしれない。ウィルス性心筋症により12歳で心臓移植を受け、リハビリも兼ねて始めたのがゴルフとの最初の出会い。2001年にプロ転向を遂げたが、08年に心臓発作に襲われて再び心臓移植を実施。2度の大手術を乗り越えて現在も米国ツアーでプレーを続ける姿は、心臓移植を経たプロアスリートの象徴ともなっている。
自身も、ゴルフイベントを通した臓器移植への認識を高めるための活動を積極的に行っているコンプトン。今週の月曜日と火曜日には大会を主催するチューリッヒとの共同イベントに参加し、臓器移植が行われた患者と交流する機会が得られたという。
「今週は忙しかったから、練習ラウンドは9ホールしかできていないんだ。でも、決して負担なんかではないよ。月曜日に病院を訪れて、(臓器移植をした子供たちの)ご両親と多くの時間を過ごした。今週、僕が気持ち良くプレーできているのはそのお陰だとも思っているんだ」。
「それはどうして?」メディアの問いに対し、コンプトンは続けた。
「移植を終えた後の子供たちやご両親は会話を求めているはずなんだ。僕が(最初に)心臓を移植してから21年が経った。僕なら(移植後も)普通の生活ができることを保証できるし、みなさんを励ますことができる。だから、僕も心地良い気分になれるんだよ」。
12年からは大半をレギュラーツアーで過ごし、昨シーズンは賞金ランキングとフェデックスランキングともに125位以内に食い込んで初のシード権を獲得。32歳を迎えた今、ようやくツアーのレベルに体が馴染んできた。
「とてもエキサイティングだ。パットが良ければ優勝のチャンスもあると思う」。まだ初日ながら口からもれた“優勝”の2文字は、メディアだけに向けられた言葉ではないはずだ。(ルイジアナ州ニューオーリンズ/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。