フェニックス名物“スイート16”
乾燥した空気とまぶしい太陽が照りつけるTPCスコッツデール。アリゾナの荒涼とした砂漠地帯に開かれたこの場所が、年に一度のお祭り騒ぎを迎えている。
「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」名物といえば、やはり16番ホールだろう。この162ヤードのパー3ホールの周囲を、ギャラリースタンドが360度取り囲む様はまるでボールパークと見紛うばかり。“スイート16”とも呼ばれるこの1ホールに、今年も1日あたり15,000人から20,000人の来場が予想されている。
ギャラリースタンド上部には、“スカイボックス”と呼ばれる個別スペースが設けられており、その数は全部で200個。1区画当たりの平均価格は46,000ドル(約469.2万円)というから、これだけで9.4億円を売り上げる計算だ。
今週の入場者数は、月曜日6,577人、火曜日32,456人、今日水曜日はすでに62,234人。この日の夕方、プロアマ戦が終わったあとのスタジアム(と呼ばせて貰えば)に足を踏み入れると、大音量のダンスミュージックをBGMにチアリーディングが行われ、セレブたちのショットパフォーマンスや、国歌斉唱、それに合わせて上空には編隊を組んだ飛行機(さすがに戦闘機ではない)が通過するなど、これぞアメリカと言わんばかりのエンターテイメントに満ちていた。
この規模のギャラリースタンドを設営しようとした場合、準備には最低数週間掛かるという。TPCスコッツデールがPGAツアーと水利再生利用局、スコッツデール市とフェニックス・サンダーバード(大会主催団体)の協力のもと、最初から理想的なトーナメントコースとして企画されていたのに対し、メンバーシップが主流の日本のゴルフ場とでは、その実現の困難さには大きなギャップがあるようだ。
この1ホールは、ゴルフ場の中にありながらも別世界だ。昨年、今大会に初出場したパドレイグ・ハリントンは、トーナメント最終日に開催されるNFLの優勝決定戦(スーパーボール)を意識して、観客戦にフットボールを蹴り込むパフォーマンスを披露した。今年も予選通過を果たし、同じパフォーマンスをすることが念願だ。
酒を飲んで酔った観衆をいかに味方に引き込むか。チーム松山英樹の関係者はこんなことも忠告している。「ここフェニックスはアリゾナ州立大の地元。彼らの大学カラーは黄色(金色)とえんじ色。そのライバルなのがツーソンにあるアリゾナ大で、その大学カラーは赤と紺。だから、赤や紺色の服を着ていると、それだけでブーイングされるよ」。いやはや、本戦に向けて、期待と緊張が増すばかりだ。(アリゾナ州スコッツデール/今岡涼太)