2022年 マスターズ

“特等席”には止めない 前年王者・松山英樹は今年も逆境からティオフ

2022/04/07 07:06
チャンピオンの“特権”は使わないという

◇メジャー第1戦◇マスターズ 事前情報(6日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7510yd(パー72)

オーガスタナショナルGCのクラブハウス前には、歴代優勝者だけが期間中に駐車できる“チャンピオンズパーキング”がある。PGAツアーの他大会と同じように、勝者をたたえたスペースが確保されているが、松山英樹は今年この“特等席”を使用していない。

その様子は現地のテレビ放送で「彼はやはり謙虚だ」と驚きを持って伝えられていた。ただ松山にとって、彼のチームにとってそれはごく自然なことかもしれない。クラブハウス前からドライビングレンジまでは少々距離があり、カートでの送迎がある。ドライビングレンジ裏の、他選手と同じエリアに止めた方が練習にはなにかと便利なのだ。

「毎ホール、ティイングエリアに行くと拍手をしてくれる。そこは今までと違う印象を受けました」。前年王者としてパトロンから注目され、恒例のチャンピオンズディナーに出席して緊張の時間を過ごしても、コースでのたたずまいは変わらない。

“逆境”からマスターズ覇者としての防衛戦に臨む

1カ月前に首から肩甲骨にかけての痛みを発症し、予定していたビッグトーナメント「ザ・プレーヤーズ選手権」を棄権、「WGCデルテクノロジーズ・マッチプレー」を欠場した。復帰戦となった「バレロテキサスオープン」も2日目に途中棄権した。プラン通りに調整は進まず、PGAツアーによる今大会の優勝予想の格付けでは圏外にいる。

だが、下馬評の低さは1年前だって同じだった。年明けからの試合でトップ10が一度もないまま入ったオーガスタで突然覚醒し、日本人史上初の快挙を遂げた。

懸命な治療と調整に励んだこの数週間。公式会見でコンディションについて聞かれ、「(最近)フルショットをしていなかったので正直、どういう状態なのか自分も把握しきれていない状況。でも、そんなに暗い感じで僕は思っていない」と言った。「このまま痛みがなくなれば」と案じていたその翌日、6日(水)の最終調整で痛みを気にするような様子は少なかった。午前中にアウト9ホールで行った練習ラウンドには、力強く1Wを振る姿があった。

「スタート前に『マスターズチャンピオン』と(各試合で)言われること。先週(の試合)が最後で、寂しい思いがした。でも、また勝てばそう言われると思うので頑張りたい」。グリーンジャケットはまだ、返せない。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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