宮里藍が語る「全米女子オープン」への思い
◇海外女子メジャー◇全米女子オープン 事前(11日)◇トランプナショナルGCベドミンスター(ニュージャージー州)◇6732yd(パー72)
正直、申し訳ない気持ちもある。宮里藍にとっては、今年が現役最後の「全米女子オープン」。当然、良い結果を残したい気持ちはいつも以上に強いだろうし、平常心で臨むことがいかに大事かということも分かっている。それでも、やっぱり聞かずにはいられない。彼女にとってこの大会がどんな意味を持ち、どんな意気込みで挑むのかを――。
全米女子オープン優勝という壮大な目標を掲げて、2003年にプロ転向した宮里。「よくも大きな目標を持って言えていたなという感じですね」と、希望に満ちた当時を振り返る。
「でも、それがあってのいまの自分。小さいときからこの試合に憧れて、目標を持って来たからこそ、ここまで伸びて来られたし、長い間プレーもできたと思う。当時の自分は怖いもの知らずで自信もあったし、本当に勝てるチャンスはあると思っていた。いまでももちろん――」と宮里。「今週はショットの調子が良い分、チャンスはあると思うので、本当に自分を成長させてくれた試合の1つだと思う」と話した。
自分に期待する本心をチラリと明かしたが、すぐに客観視へと戻る辺りが宮里流だ。その直前、別の質問には「現状を客観的に見ると、グリーン上でちゃんと戦えてない感じがあるので、優勝争いにはちょっと足りないという気もする。その点は、多少の不安要素はありつつ、不安があってこそバランスが取れるのがメジャーだと思うので、そこはしっかりとメンタルコントロールでカバーしていきたい」と答えている。
ネガティブを受け止めて、ポジティブに変えてしまう。こんな意気込みにも、特有の気持ちの整理が見てとれるだろう。
引退会見では、年間5勝を挙げた2010年前後でさえ、メジャー大会で優勝できなかったことで、モチベーションに迷いが出たと打ち明けた。では当時の宮里でも、メジャーで勝つには、やっぱりまだなにかが足りなかったのか?
「いま、メジャーの成績をずらっと並べてみると、十分戦えていたなって思えたりする部分はある。思っていたほど、優勝は遠くないんじゃないかって、いまはそうやって思えているけど、当時はそこから上に行くのは大変だったし、まだまだ足りないって思うことは多々あった。でも、セットアップ(コースセッティング等)が違う分、毎週の流れとは違うので、そう考えると、本当にその週しっかりとうまくやれた人が勝てているし、その難しさはすごく感じます」。
2008年から2012年までの5年間、計20回のメジャー大会で3位2回、5位1回、6位3回を含むトップ10が計7回。35%の確率でのトップ10フィニッシュは、「戦えていたとは思う」という自己評価の通りだろう。父・優氏も「(勝てる要素は)揃っていたと思う」とうなずいた。勝負は時の運――。
一番の思い出は、宮里美香と優勝争いをした2011年大会だという(最終結果は美香5位、藍6位)。だが、まだもう1回、それに負けない思い出を作るチャンスが残されている。開幕まであと2日。その瞬間を静かに待とう。(ニュージャージー州ベドミンスター/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka