地球は丸い 上原彩子の転がり方
フランス・エビアンを舞台に行われている今季海外メジャー最終戦の「ザ・エビアン選手権」。米ツアーを主戦場とする選手たちの移動経路はさまざまだが、アトランタから出発した上原彩子は、アトランタ→シカゴ→ワルシャワ(ポーランド)→ジュネーブ(スイス)と飛行機を乗り継いで、そこからレンタカーを1時間ほど運転した。
「姉がチケットを手配してくれているんですけど…」と上原は言う。「乗り継ぎは面倒だけど、稼ぎが悪いから文句はないです。きっと安かったんだと思います」と、長時間の移動も平然と受け入れた。初めて乗った航空会社もあり「ちょっと心配だったけど、意外に快適」と笑ったが、問題は食材の入ったスーツケースが2日間届かなかったこと。だが、こんなことはザラにある。
今週、上原彩子のキャディを務めているのは、スペイン人のヘズー・モゾ氏だ。米国女子ツアーで活躍するベレン・モゾ(スペイン)の実兄で、数週間前までは妹のキャディをやっていた。その後、上原と仲の良いチェ・チェラのバッグを2試合担いで、今週のエビアンで初タッグを組むことになった。
「ベレンに『今度、お兄ちゃんにキャディをやってもらうよ』って言ったんです。そしたら『すっごい一生懸命やる人だから、いいと思うよ』って言っていて。家族が言うくらいだからと思ったけど、本当にいいキャディです」。グリーン上ではラインの読みも手伝ってもらい、クラブ選択やマネジメントも相談しながら決めている。
上原の母・恭子さんは「あのキャディさんは、彩子のことをすごく認めてくれるんですよ。あの子は詰められるとダメなタイプだから、やりやすいんじゃないですか」と話した。
そんな上原のおっとりした性格にほだされた人がもう1人いる。会場近郊に住むフランス人男性で、2年前の今大会に上原が出場した際、ホームステイした家のご主人だ。その年から3年間。試合期間中は仕事を休んで、毎日18ホール、上原のプレーについて歩き応援している。
どんなところが気に入ったのか、聞いてみた。「彼女だけじゃなく、お母さんも含めた家族が好きなんだけど、寛大で、控えめでスイートなところかな」。
今年は直前まで出場が確定せず、その家に泊ることはできなかった。泊っているのは、偶然にも上原のキャディと同じスペイン人の選手。1465年に建てられたというその古い家の壁には、スペインと日本の国旗がたなびいている。
「スコアが出るときは運も大事。そういうときは、ミスショットが良い方に転んだりする」。2日目を終えて37位で決勝ラウンドに進んだ上原のゴルフが、まるで人生の処し方そのもののように思えてきた。(フランス・エビアン/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka