2015年 全米女子オープン

ランカスターに3万人 アーミッシュって?

2015/07/08 11:48
コース近辺の歩道で見つけたアーミッシュ。こんな人たちがこの町にはゴロゴロいる。(撮影:宮里美香帯同、工藤健正トレーナー)

海外メジャー第3戦の「全米女子オープン」が開催されるペンシルバニア州にあるランカスターCCで、まるで時候の挨拶のように交わされている言葉がある。

「アーミッシュ見た?」――である。

アーミッシュとは1693年のスイスを起源とする、ヤコブ・アマンに率いられた伝統的キリスト教を信仰する宗教集団で、近代文明と距離を置く“簡素な生活”がその特徴だ。ここペンシルベニア州には18世紀初頭に多くのアーミッシュが移住してきて、今ではランカスター郡だけでその数は3万人を超えるという。

筆者は見た。それも大勢だ。フィラデルフィア空港から、ランカスターCCまでは車で約1時間半。コースまであと数マイルに迫ったところで、道の両脇にのどかな田園風景が広がり、牛や馬が放牧されている光景が目に入ってくる。すると、突然路地から馬車が顔を出した。

そこから数マイルは、車道の両脇を次から次に馬車が通り抜けていった。荷台の後ろには、反射板をつけており、左折するときは堂々と道の真ん中で待機している。なにせ動力が馬なだけに、すれ違いざまに不意に飛び出してくるのではないかと不安になる。車に乗らない彼らの移動手段は、馬車か、サドルのない自転車か、徒歩。広場には無数の馬車が停められ、アーミッシュが集まってマーケットのようなものも開かれていた。

自給自足の生活を営み、その農業はオーガニック。彼らが作る農作物は市場で高価で取引されているというが、他にも家具屋や土産物屋が近辺に軒を連ねていた。

さて、「アーミッシュ??」という反応をするのは、日本から来た選手たちだ。「あー、あの馬車ですか?」と気付くものの、さすがに詳しい知識を持ち合わせている選手は多くない。その一方で、「アーミッシュは成人するときに、普通の生活を送るか、アーミッシュとして生きるか選ばなくちゃいけなんです。もし普通の生活を選んだら、家族とも絶縁になるんです。大変じゃないですか?」と、当事者の立場に踏み込んで教えてくれたのは、米ツアーを主戦場とする上原彩子だ。さすがに旅慣れている感がある。

だが、上には上がいた。メジャー大会2連勝を狙う、世界ランク1位の朴仁妃(韓国)だ。5週間前にランカスターCCの下見に訪れたという朴は、「アーミッシュの町に来るのは初めてだったから、体験ツアーに参加した」という。「彼らの家に行って、家の周りを見て回った。馬車はとってもクールだったし、市場にも行った。食べ物は本当に美味しいし、生き方が違う。あの雰囲気は好き」と、すでにアーミッシュも満喫済みだ。今週現地に来てから浮かれているようでは、メジャーに向けた準備では、後れを取っていると言うべきなのか…。(ペンシルベニア州ランカスター/今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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