レジェンドと予選同組 フォン・シャンシャンの幸運
カリフォルニア州のミッションヒルズCCで幕を開けた、海外女子メジャー今季初戦「クラフトナビスコ選手権」。コース特有の強風もなりを潜め、穏やかで夏のような強い日差しの中で首位に立ったのは、6アンダーをマークしたフォン・シャンシャン(中国)だった。
フォンが、この日のラウンドを心待ちにしていた理由がある。それは、大会2日前の火曜日のこと。発表になった予選ラウンドの組み合わせで、世界ゴルフ殿堂入りのプレーヤー、エイミー・オルコットと同組だと知ったからだ。
現在58歳のオルコットは今大会で1983年、88年、91年と3勝を果たしたレジェンド。そして88年の時は優勝した歓喜のあまり18番グリーンの奥にある池にゴルフウェアのまま飛び込んだ。後にこの優勝者のダイブが“伝統”と化していくが、今大会における来年以降の開催は未定となっており、それも今年が最後になるかもしれない。
優勝して池へダイブすることは、出場全選手の夢と言っても過言ではない。「この試合に勝つ秘訣は?」。初日、同組でラウンドしたフォンも、ラウンド中にオルコットに質問を投げかけた。すると、「それは教えられないわ。最終日が終わったら教えてあげる」とあっさりかわされてしまったという。
優勝への秘訣こそ封印されてしまったが、この日、オルコットのプレーを目の当たりにしたフォンは「彼女は飛距離こそ出ないけれど、難しいこのコースの攻め方を本当に熟知している。パーを拾って、スコアをまとめる姿はすごく勉強になりました」と、大先輩のプレーから多くのことを収得。ラウンド中にオルコットは、雑談やコースのことについては頻繁にフォンに話しかけ、和やかな空間が2人を包んだ。
初日を終えて6アンダー首位のフォンに対して、オルコットは最下位の9オーバー108位タイ。順位では対照的な位置に分かれたが、フォンには2日目もオルコットとのラウンドが約束されている。フォンの真摯な質問に対し、ジョークを交えながら答えるオルコット。フォンにとって貴重な学びの時間が、明日に向けて再びの原動力となる。(カリフォルニア州ランチョミラージュ/本橋英治)