2013年 全英リコー女子オープン

強風の中で聞いたビートルズ

2013/08/04 03:31
青空だけど風だけが恨めしい。けれど、これも人生の1日だ。

予報通りの強風が吹き抜けたセントアンドリュース。「全英リコー女子オープン」3日目は、5組9選手がホールアウトしたものの、12時33分に風による中断が決定。その後は、1時間おきに情報がアップデートされるが、いっこうに再開には至らない。いたずらに時間だけが過ぎていった。

焦燥感に駆られて、ふらふらとメディアセンターを出ると、遠くから聞き慣れたメロディが風に乗って流れてきた。「I Saw Her Standing There」。言わずと知れたザ・ビートルズの初期の曲だ。

音に導かれるように近づいていくと、1番ティの脇にあるギャラリースペースにたどりついた。中央にある特設ステージで、ザ・ビートルズのコピーバンドが生演奏中だった。その前では白髪のおじいちゃんやおばあちゃんが楽しそうにツイストを踊り、小さな子供は靴を脱いではしゃぎ回っている。周囲のテーブルでは、ビールを飲んだ観客たちが、陽気に歓声を上げていた。プレーが中断しているので「Quiet please!」なんて誰も言わない。

「次が最後の曲になるんだけど・・・」と、ポール・マッカトニー(役)のMCが入ると、観客からは“ノー”とため息が漏れる。少し残念そうに顔をしかめたポールだが、気を取り直すように演奏を始めた。その選曲は「All You Need Is Love」。まさに、今の気分を癒やしてくれるのにぴったりだ。

“知られていないことを知ることはできないよ
見えないものを見ようとしても無理だ
君の居場所じゃないところにいることはできない
ほんとは簡単なことなんだ
君に必要なものは愛、愛こそすべてなんだ”

風が強すぎてゴルフが出来ないなら、仕方がない。待てど暮らせど状況が好転しなくても、どうしようもない。1日を無益に過ごしているようにも思えるけど、そんなことはない。藍ちゃんは2日でいなくなったけど、大事なものは“愛”なんだ。古いものやそこにある自然を大切にする英国の人々。すべてを受け入れる姿勢に“愛”を感じた。(英国セントアンドリュース/今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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