米国女子ツアー

「『頑張って』は勇気がいること」 勝みなみ流ファンサービスの背景

2026/03/02 18:00
声援が聞こえれば必ず応える。勝みなみが“ファン”の立場でもあるから思うこと

◇米国女子◇HSBC女子世界選手権 最終日(1日)◇セントーサGC タンジョンコース(シンガポール)◇6793yd(パー72)

大会3日目のラウンド後。アテストエリアへと歩き出した勝みなみは、ロープ際で立つ高齢の男性ギャラリーに駆け寄り「体調、大丈夫でしたか?」と気遣った。主戦場を米ツアーに移して4季目のことし。前週のタイにシンガポールと、日本から応援に駆けつけてくれたファンの一人だった。

ギャラリー数が1試合あたり平均1万人を超える日本ツアーに比べ、世界各地を転戦する米ツアーでは自分の応援に来てくれたファンの見分けがつきやすい。「日本はすごくたくさんの方が会場に来てくれるから『あの方、また応援に来てくれた』って認識するのは難しいけど、アジア、アメリカと来てくださる方はなんとなく覚える」という。

ラウンド中に声援を受ければ、必ず会釈するように心掛けている。自身も“ファン”としてプロ野球やプロレス会場に足を運ぶことが多く、観戦時は「静かに見守るタイプ」を自認するだけに、「私のために来てくれて『頑張って』と言うのって勇気がいること」を実感した。「声を出して応援してくれる人がいると、めちゃくちゃうれしいですね。自分ができないからこそ尊敬もするし、気持ちがうれしい」。声援のありがたみを、より強く感じるようになった。

今週は高温多湿なシンガポールとあって、勝は熱中症を心配して帯同するその男性に飲料水入りのペットボトルも手渡していた。男性の名前は79歳の富久邦彦さん。日本をメインにプレーしていた当時から勝を応援し続けているという。「声をかけると丁寧に返事をしてくれる」という人柄に惹かれたそうだ。

声援の規模が小さいからこそ届く思いもある

そもそもゴルフを観戦するようになったのは悲しい身内の事情から。2000年3月8日に都内の中目黒駅構内で起きた日比谷線の脱線衝突事故で息子を亡くし、旧友の助けも借りて傷心を癒すべくゴルフを始めたそう。ツアー会場には体を動かす目的で足を運ぶようになった。富久さんのバッググラウンドを知った勝は「その話を聞いたときに泣いちゃって。悲しみを乗り越えようとしている人が、こうやって私の応援をしに来てくれた」ことに胸が締めつけられる思いだった。

今季こそ初優勝を遂げたい米ツアー4年目のシーズン。昨年10月の「ビュイックLPGA上海」ではジーノ・ティティクル(タイ)と5ホールのプレーオフを争い、世界ランキング1位をあと一歩のところまで追い詰めた。手が届きそうで、届いていない初タイトルへ。ロープの外から届くエールを活力に、勝は戦い続ける。(シンガポール・セントーサ島/石井操)

■ 石井操(いしいみさお) プロフィール

1994年東京都生まれで、三姉妹の末っ子。2018年に大学を卒業し、GDOに入社した。大学でゴルフを本格的に始め、人さまに迷惑をかけないレベル。ただ、ボールではなくティを打つなどセンスは皆無。お酒は好きだが、飲み始めると食が進まないという不器用さがある。