2010年 HSBC女子チャンピオンズ

藍と桃子、世界で戦う二人の明暗

2010/03/01 14:48
ウィニングパットを沈めて笑顔の宮里と、敗れた上田。勝負の世界は明快だ

最終日最終組で日本人同士が優勝を争う。米国LPGAツアーでそんな光景を目の当たりにし、時代の勢いというものを感じた。ゴルフがアジアを向いている。世界経済が中国、インドの人口大国に向けて舵を切り始めた流れに乗って、ゴルフ界でもアジアンパワーが勢いを増している。

それにしても、宮里藍のプレーは圧巻だった。「HSBC女子チャンピオンズ」最終日、11番から3連続で長いバーディパットを沈めた時は、日本で強かった頃の宮里がフラッシュバックした。どんなに長いパットでも決めそうな予感がし、それが的中する。同組の上田桃子がいくら内側のバーディチャンスにつけようとも、お構いなしに外から沈める。上田にとっては、成す術がなかった。

宮里に米ツアーでの勝ち方も分かってきたのかと聞くと、「もう5年目ですし、先週みたいに9アンダーを出して勝ったとかそういうことも沢山見てきた。ボギーを打っても、ダボを打っても、最終的には我慢した人が勝てる。最初の4年間は忍耐を学んできた気がします」。昨年やっと見つけた自分のスタイルが、すでに宮里の中で熟成を始めているようだ。

次に続く選手もすぐそばにいる。この日の上田桃子を評して宮里は言う。「彼女は感情的になりやすい選手で、去年までは自分をコントロールする力がまだそんなに強くなかったけど、今年は忍耐を意識してプレーしている感じがした。すぐに勝てそうな感じはありました」。

優勝争いから脱落して、意気消沈する上田は、目に涙を溜めながらクラブハウスに引き上げてきた。そして、ロッカールームへと消える。それでも、マネージャーを通して取材を申し入れると、宮里の会見が終わるまで待っていてくれ、気丈に質問に答えてくれた。「次に繋げます」。その一言だけでも、十分だった。(編集部:今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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